注目テーマをメッタ斬り! “人気株”の勝者・敗者#10

米中新冷戦の時代を迎え、各地で地政学リスクが高まる中、株式市場で恩恵を受ける銘柄の裾野が広がっている。そこで、『注目テーマをメッタ斬り!“人気株”の勝者・敗者』(全18回)の#10では、日本の防衛関連株を有望視するトルコ出身の人気エコノミスト、エミン・ユルマズ氏にインタビュー。具体的な国内銘柄を多数挙げながら、広義の防衛関連株に期待を寄せる理由について明らかにしてもらった。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

「防衛」は武器の製造のみならず
幅広い分野に及んでいる

――グローバルに地政学リスクが高まる中で、以前から日本の防衛関連株を有望視していますね。

 はい、まずは私たちが直面している環境を理解する必要があるでしょう。最近、(米著名投資家の)ウォーレン・バフェット氏が(同氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイを通じて)台湾のTSMC株の大半を売却したとのニュースがありました。この背景には、半導体セクターの落ち込みもあると思いますが、地政学リスクも意識しているように見受けられます。

 この地政学リスクというテーマが昨今、いろいろな面で日本株にも影響を及ぼし始めています。例えば、サプライチェーンを日本に回帰させる動きがその一つです。今春刊行の「会社四季報」でも、JVCケンウッド(証券コード6632)のコメント欄には「地政学リスクや為替変動に対応するため、国内生産回帰を推進」との記載があります。この他、AGC(5201)やクボタ(6326)などの大手企業でも、サプライチェーンの再構築を意識した動きが見られます。

 そして、防衛関連銘柄を見ていくと、例えば、(情報セキュリティーなどを手掛ける)バルクホールディングス(2467)では、「丸紅と連携して施設販売本格化。当社訓練を基礎にサイバー防衛資格の制度狙う」とあります。いわば、これまで気に掛けられてこなかった企業も、防衛分野の事業を拡大させる動きがみられているわけです。

 つまり、「防衛」といっても、決して単純に武器を製造するだけでなく、例えば、サイバー空間における防衛もあれば、国家安全保障に関わる領域として食糧や資源関連なども、私は防衛関連と捉えられると思っています。

サイバーセキュリティー、航空機部品、防毒マスク……。次ページでは、「防衛」の裾野が以前より大きく広がっていると考えるエミン・ユルマズ氏が、他にも有望と考える関連銘柄を多数挙げ、「なぜ今が買い時なのか」を明らかに。併せて、大インフレ時代に日本株自体の強さが増すといえる、三つの理由を大開陳する。