6月25日に東日本大震災復興構想会議から提言書が発表された。当連載でもその提言を精査し、そこで提案されている復興策を検証しようと思っていたが、発表されたモノを見てやめた。理由は論評できないからだ。なぜ、論評できないかというと、そこに「復興のコンセプト」がないから。コンセプトのない政策や提言を論評しても意味がない。
政策にはコンセプトが要る。政策のコンセプトとは、たとえば「所得倍増計画」とか「技術立国」のようなもので、誰が聞いてもこの国がどの方向に向かおうとしているのか、一発で分かるような言葉やフレーズ。それがコンセプトである。
復興構想の提言は、まず、復興のコンセプトから始まらなければならない。しかし、今回発表された提言には、一言で表せるコンセプトがない。コンセプトがないということは、そこには確固たる意志がないということだ。「復興のためには断固としてこれをやらねばならない!」という強烈な意志が見えてこない。今回の震災対策における最大の問題点は政府のリーダーシップの欠如だが、はからずもこの提言書はその問題点を再確認するようなものとなってしまっている。
自分らの復興プランを
熱く語る大学生
その一方で、この国の若者たちは素晴らしいリーダーシップを発揮しようとしている。GW以降、ボランティアが激減していることもあり、若者、特に大学生の被災地への関心が薄れてしまったのではないか、という声も多いが、実は数多くの若者リーダーが育ちつつある。
アメリカン・エキスプレス社とダイヤモンド社は、次世代リーダー育成を掲げ、学生を対象とした『日本復興を考える学生会議』というプロジェクトを立ち上げた。日本全国の大学生/大学院生に呼びかけ、日本復興の意志とアイデアを持った学生から30名を選抜。その選抜メンバーは、安藤忠雄氏のチャリティセミナー、一橋大学の米倉誠一郎教授監修による集中研修等、さまざまなカリキュラムを受講し、そのプロセスの中で、自らの手で「復興プラン」の草案を策定する。さらには、プラン実現のためのフィールドワークを実施したのち、最終的には米倉教授をはじめとする審査委員の前で「日本復興プラン」として発表することになる。これを、7月から10月までの約3ヵ月間をかけて行なう。
先週の土曜日、ファイナリスト30名を選抜する最終選考会が行なわれ、筆者も審査員の1人として参加したのだが、東北、関西、九州など全国から、書類選考を通過した約50名の学生が参加。日本で学ぶ外国人留学生数名や、ロンドン大学留学中の日本人学生も参加した。
ほぼ全員が被災地に行き、自分の目で現地を見てきている。そして、全員がボランティアやチャリティなど、なんらかの活動を行なっている。ボランティア団体を組織して100名単位で学生ボランティアを送り込んでいる学生もいる。スマートグリッドなど、研究室で研究している成果を被災地で実証実験し、プロジェクト化を考えている学生もいる。1700万円もの義援金を集めた学生もいる。英語でメッセージを発信し、世界8ヵ国から被災者を応援するメッセージ入りのイラストを集めた学生もいる。
選考会ではこのような学生がひとり1分ずつ、自分達なりの「復興構想」を語った。テーマは脱原発から子どもたちの心のケアまでさまざまだが、感心したのはコンセプトを明確に語れる学生が多かったことだ。1分という短い時間でプレゼンする必要があり、伝えたいことをコンパクトにうまくまとめることが問われる。コンパクトにまとめるためには、コンセプトを明確にする必要がある。いまどきの学生は、こういうことがうまい。