5月31日は、WHO(世界保健機関)が制定した「世界禁煙デー」。世界では188ヵ国中49ヵ国で、すでに医療施設・学校・行政機関・飲食店・交通機関などの公衆の場に「屋内全面禁煙を義務化する法律」がある。日本は法規制による受動喫煙防止対策では、最低レベルの超後進国。最近は、喫煙によって衣服や髪の毛にたばこの煙が付着した際の有害物質の影響(三次喫煙)を懸念する報告もある。オリンピック開催国として、政府はどう決断するのか。(医療ジャーナリスト 福原麻希)
自民党案の
「店内分煙」が難しいワケ
受動喫煙対策の強化を盛り込んだ「健康増進法改正案」をめぐって、自民党と厚生労働省の調整が難航している。争点は「飲食店での喫煙」。自民党は「一定面積以下の店で表示をすれば分煙可」、および「未成年の入店禁止」などの条件を求める。
一方、塩崎恭久厚生労働大臣は飲食店の客だけでなく、従業員を受動喫煙から守るため「建物内(屋内)は原則禁煙」を譲らない。
厚労省の調査によると、現在、国民の8割は非喫煙者(※1)という。同調査で過去1ヵ月間に受動喫煙を体験した非喫煙者の割合を質問したところ、飲食店で41.4%、遊技場で33.4%、職場で30.9%(複数回答可)だった(※1)。
「受動喫煙」とは、「非喫煙者がたばこの煙(喫煙者が吐き出す煙+たばこから立ち上る煙)を感じたとき」(日本禁煙学会・作田学理事長)と定義されている。
国際がん研究機関(IARC)の発表によると、たばこの煙には5300種類以上の化学物質が含まれ、そのうち200種類以上は有害物質、さらに70種類以上は発がん性物質という。
特に、受動喫煙者はたばこの煙に対する感受性が強い。このため、「健康被害は1日5~10本の喫煙に匹敵します」と作田理事長は説明する。