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安東泰志の真・金融立国論

震災後の企業再生にはファンドを正しく活用せよ
~銀行だけではできない中堅・中小企業の再生

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第11回】 2011年7月6日
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震災後に必要な企業再生の範囲

 震災によって被害を受けたのは、直接的には被災地の企業であるが、それ以外の地域の企業も、漸くリーマンショックから抜け出せるかどうかという時期に、震災によるサプライチェーンの断絶や電力不足などの供給面の制約のみならず、更なる需要の低迷にも見舞われたため、経営難に陥っているケースが多い。従って、震災後の日本において手当てが必要な企業再生の範囲は、被災地の企業だけではない。

 ただし、被災地の企業の再生と、それ以外の地域の企業の再生は、必要な対応が異なる。すなわち、被災地の企業の多くは地震や津波によって企業基盤そのものが一部または全部失われてしまっており、事業を再開する時にはいわゆる「二重ローン」問題に直面する。つまり、事業の「再生」以前に、事業の「再開」の時点で何らかの政策対応が必須なのに対し、それ以外の地域の企業は、経営不振状態からの脱却、すなわち企業の「再生」に繋がる政策だけで足りるのである。

二重ローン問題とファンド

 まず、被災地の企業の事業「再開」について考える。いわゆる「二重ローン」問題についての筆者の基本的な考え方は前回の連載で「二重債務者の問題」として述べた通りであるが、要すれば、金融機関の債権放棄を促す一方でこれら金融機関の資本を増強する政策がその根幹である。その後、6月10日に出された民主党の提言では、法人のみならず個人・個人事業主の借入に関しても私的整理のガイドラインを作成し、債務の再編を行いやすくすると同時に、無税償却基準の弾力化や金融機関への資本注入のハードルを下げる措置が盛り込まれており、概ね筆者の考え方が踏襲されているように思われる。

 一方で、民主党案には、「再生」が見込まれる中小企業については、相談窓口として中小企業再生支援協議会の体制を拡充すると共に、中小企業基盤整備機構や民間金融機関等が出資する「中小企業再生ファンド」を新たに被災地に設置し、出資や債権買取り、DES(債務の株式化)などを実施することも謳われている。

 一方、自民党が5月27日に公表した提案によれば、二重債務者の救済のために新たに公的な機構を設立し、被災地の中小企業や個人などの既存債務を当該機構が買い取ってそれを資本扱いにし、長期の再生を目指すとしている。

 国会では、今後これら両案が比較検討されていくことになろうが、筆者の意見は以下の通りである。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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