東日本大震災に伴う福島原発事故は、日本の原子力政策が抱える多くの課題を白日の下に晒した。「脱原発」の声が強まる一方、代替エネルギーの可能性はいまだはっきり見えてこない。菅政権が成立を目指す「再生可能エネルギー特別措置法案」については、「政争の具にされるのではないか」という不安も募っている。国中を巻き込んで混沌とした議論が続くなか、以前から原子力政策のあり方について提言を続けて来た河野太郎議員は、震災後も自身のブログやメディアを通じて国民目線の主張を行なっている。これまで原子力政策を推し進めてきた自民党の中で、河野議員が原発に警鐘を鳴らし続けて来た背景には、どんな危機意識があったのか。今後日本が目指すべきエネルギー政策とは何か。詳しく話を聞いた。(ダイヤモンド・オンライン 原英次郎、小尾拓也)
日本の核燃料サイクルは
もはや完全に破綻している
――東日本大震災とそれに伴う福島原発事故は、未曾有の被害を日本にもたらした。世間では、「脱原発」の声が盛り上がっている。以前から日本の原子力政策について踏み込んだ提言を続けて来た河野議員は、足もとでどんな意見を持っているか。
そもそも私は、原子力政策と言うよりも、核燃料サイクルのあり方について提言を続けてきた。核燃料サイクルの焦点となるのが、高速増殖炉と放射性廃棄物の最終処分だ。高速増殖炉は、ウランを燃やしてできた使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、プルトニウムを燃やしながら発電し、同時にプルトニウムを増やそうというものだ。資源の有効利用を図る目的で進められていたが、今や高速増殖炉は大きな壁に直面している。
1967年に策定された長期計画では、1980年代後半までに高速増殖炉を実用化するという目標が示されていた。しかし、長期計画が改訂されるたびにどんどん実現性が遠のき、今や2050年までズレ込んでいる。
政府は使用済み核燃料を全量再処理して、残った高レベル放射性廃棄物を最終処分するために、「2028年までに候補地を見つけ、2038年までに施設を作って最終処分を始める」と言ってきた。しかし現状では、候補地探しどころか公募に応ずる自治体すらない。