震災復興、消費税引き上げ、円高対策など、発足当初から多くの課題に直面し、先行き不透明感が募る野田内閣。一方で、内紛を続ける民主党に党内融和をもたらす「最後の切り札」として、期待をかける声も多い。野田内閣は、政治に新しい風を吹き込み、行き詰まる日本に光明をもたらすことができるだろうか。政界に太いパイプを持ち、第一線で政局を見つめ続けてきた政治コラムニストの後藤謙次氏が、野田内閣の真の強みと隠された不安、そして混迷を極める政局を斬る。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)
代表選の「本命」は初めから野田氏
以前から「勝てる条件」を整えていた
――5候補が立候補した民主党代表選は、野田佳彦・財務相と海江田万里・経済産業相による決選投票が行なわれ、野田氏が代表に選出された。国民的人気のあった前原誠司・前外務相が決選投票に残れず、小沢グループの支持をとりつけて磐石に見えた海江田氏が敗れるなど、今回の代表選は番狂わせが多かったと言われる。この結果は、予測していた通りだったか、それとも意外だっただろうか。
Photo by Toshiaki Usami
私はずっと、大本命は野田氏だと思っていた。代表選は、収まるべきところに収まったという印象だ。海江田氏と前原氏は、共に立候補に当たって「言い訳」をしなければならない立場であったことが、ウィークポイントとなった。
これまで、「言い訳」から入った候補が選挙で勝てた試しはない。海江田氏は、国会で涙を流す姿が度々報道されたため、「精神力が弱い」というイメージが付いてしまったこと、辞意表明をしたにもかかわらず結局辞められなかったことがネックとなった。さらに、最後は小沢一郎・元民主党代表の勢力に頼って、これまで自分が菅内閣でやってきたことを自ら否定してしまった。
また前原氏は、3月に外国人献金問題で外務相を辞めたばかり。さらに、野田氏を応援していた立場を翻して突然立候補したことが、周囲に「背信行為」と映った。彼らがこうした自分の立場について、きちんと説明をできなかった時点で、「勝負はあった」と言える。