先日、担当番組にて明電舎の経営陣の方のお話をお伺いする機会に恵まれた。明電舎は三菱自動車の電気自動車「i-MiEV」のモータとインバータを提供しており、i-MiEV人気とともに、明電舎の名前を耳にすることも増えつつある。番組当日は、その経営陣の方がi-MiEVに乗ってスタジオまでやってきたということで、雑談の中で乗り心地などをお伺いすると、「ちょっと試乗してみます?」とのありがたいお言葉。お忙しい方ゆえに丁重にお断りするのが大人のマナーと思いつつも、i-MiEVに乗ってみたいという欲望は抑えきれず、厚かましくも試乗させていただいた。

 電気自動車と聞くと、どうしても通常のガソリンタイプの自動車に比べると力強さに欠けるような先入観を持ってしまう。また、公用車として使われている印象が強いためか、あまり高速で走っているイメージがなく、走りそのものに関してはガソリン車に軍配が上がるんだろうという勝手な思い込みがあった。したがって、「実は加速がいいんですよ」「走りがスムーズなんです」と乗る前に言われても、心の中では100%疑ってかかっていた。

画期的だったi-MiEV

 さて、いざ試乗である。ガソリン車の場合は、アクセルを踏み込んだのち、少し遅れて車体がついてくるという感覚がある。ある程度加速するまでは、足(アクセル)で車を引っ張っているような状況だ。しかし、電気自動車の場合はアクセルを踏むと同時に車体がついてくる。正確にはアクセルを踏むや車体のほうがぐっと前にセリ出てくる感覚である。アクセルで車体を引っ張るのではなく、アクセルの動きと同時に車体も動く。よって、むしろ背中がクルマによって押されるような感覚がある。身近な例ではゴルフ場のカートの感覚に近い。もっとも、カートにもピンからキリまで存在するため、一概には言えないが、アクセルを踏むとグッと動き出す電動カートに感覚は似ていた。

 走りもスムーズであり、音が非常に静かであった。試乗前は疑いの目で見ていたi-MiEVであったが、「うん、これなら欲しいかも」、と思ってしまうのである。i-MiEVが人気であることは知ってはいたものの、それでも、いざ電気自動車を購入しようという気持ちにはなかなかなれない。しかし、一度試乗すると、それは同じクルマでも我々が今まで慣れ親しんできたものとは違うクルマであることが分かる。そして、電気自動車に対する意識が変わるのである。

三菱自動車を救済した
三菱グループにロジックはあったか

 さて、そんなi-MiEVを生み出した三菱自動車に対して、週末の日経新聞によるとプジョーが出資交渉中とのこと。思い返せば2005年に現在の大株主である三菱重工、三菱商事、三菱東京UFJ銀行の三菱連合が三菱自動車に対して資金面、人材面をはじめとする全面支援を決定した際は、それを評価する向きはメディアでも株式市場でもほぼ皆無であった。