超高級有料老人ホームが舞台にも

 人気作家の林真理子さんが描いたのは超高級有料老人ホームを舞台にした3人の女性スタッフの奮闘劇だ。『我らがパラダイス』(毎日新聞出版)である。

 3人はいずれも親の介護や家族関係に問題を抱えながら、勤務先はパラダイスそのものの贅沢な施設。自身の生活と職場とのあまりのギャップに疑問を抱き出す。その境遇の違いを際立たせ、格差を前面に押し出した展開となる。

 なんと、施設の空き部屋に親たちを住まわせるという策略を巡らす。奇想天外のアイデアだが、なんとなく納得させられる。

 策略の引き金となるのが、認知症の父親の処遇に悩む女性スタッフだからであろう。暮らしの場を追われた父親の介護を一身に背負いにっちもさっちもいかない。兄夫婦や夫の親族などからも邪険に扱われ、窮鼠猫を噛む事態をもたらす。

 もう一人のスタッフは、初期の認知症の大金持ち入居者から結婚を望まれる。「アルツハイマーになって、死ぬほど恐怖と闘っている時、君の笑顔が救いだった」との言葉に頷いてしまう。

 予想もできないような「愉快」な結末が待っている。そこへ辿り着く誘因がいずれも認知症ケアの難しさ、という点がなかなかのものだ。

 家族を巡る小説世界では、もはや認知症介護を素通りしては成り立たない時代に入ったのは間違いないようだ。

(福祉ジャーナリスト 浅川澄一)