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医療・介護 大転換

止まらない家族介護殺人、介護保険制度の落とし穴

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第68回】 2016年12月21日
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「殺人者」になった家族の苦悩

写真はイメージです

 高齢者介護を巡る家族間の殺人や心中などの事件が多発している。息子や娘が手をかけてしまうことに加え、高齢の夫婦が「老老介護」の末に無理心中の悲劇に至る例も増えてきた。

 介護保険制度が始まって17年近い。「介護の社会化」が浸透してきたはずなのに、介護専門職や介護事業所の目が十分に届いていない。

 事件の全貌が明らかになる裁判の場で、「殺人者」になった家族の苦悩が吐露され裁判官まで涙を誘われる。ほとんどの判決は執行猶予が付く。だが、介護に追い詰められた家族を救うような介護サービスは依然として足踏み状態である。

 介護者の相談先や一時的なレスパイト(小休止)になるような要介護者の一時的宿泊サービスはほとんど手付かずのままだ。都心部を中心に今後「老老介護」は急速に広がるなか、英国など先進国の事例を早急に導入すべきだろう。

 最近の家族による介護殺人を振り返ってみると――。

●2015年11月:埼玉県深谷市の利根川で、両親の面倒を見ていた47歳の三女が両親と一家心中を図った。三女は認知症とパーキンソン病を患う81歳の母親の介護を10年以上続けていた。74歳の父親が病気になって心中をもちかけ、三女も同意したという。
裁判で三女は、「本当は3人で死にたかった」「父を証言台に立たせることにならずよかった」と嗚咽をもらした。

●2015年7月:大阪府枚方市で71歳の長男が92歳の認知症の母親を小刀で刺し殺す。長男は遺体と向き合いながら一夜を明かしていた。二人暮らしで7年間介護していた。
大阪地裁の裁判員裁判で、アルバイト生活を続けてきた長男の苦闘が吐露され「老老介護」の実態が明らかになった。

●2015年12月:栃木県那須町で72歳の夫が寝たきり状態の69歳の妻の首を絞めて殺害した。「遺体を車に乗せてきた」と警察署に自首し、「妻の介護に疲れて殺害した」と供述。要介護5の妻を11年間介護してきた。翌年5月の裁判員裁判で裁判長は、介護疲れによる事件であるとし「一定の同情の余地はあるが、1人で抱え込み短絡的に殺害した」と懲役3年6月(求刑懲役5年)を言い渡し、弁護側による執行猶予付き判決の求めを退けた。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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