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遺伝子は、変えられる。 ――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実
【第6回】 2017年6月12日
著者・コラム紹介バックナンバー
シャロン・モアレム,中里京子

その「ひと口」が遺伝子を変える!? 「遺伝学者×医師」が明かす“遺伝子スイッチ”の真実

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「遺伝で決まったことを、変えられるわけがない」――もしこれが、「完全に間違っている」としたら? いまホットな遺伝子のトピック「エピジェネティクス」を解き明かした極上のノンフィクション『遺伝子は、変えられる。』著者、シャロン・モアレム氏に遺伝にまつわる最新情報を聞く特別インタビュー! 私たちの日々の食事や暮らしが、遺伝子にどう影響するのか――「遺伝学者×医師」として活躍するモアレム氏だからこそわかった、その真実とは?(インタビュアー:大野和基)

「遺伝子は、変えられる」は本当か?

―― 近著“Inheritance”(邦訳『遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』)のサブタイトルは“How Our Genes Change Our Lives and Our Lives Change Our Genes”(遺伝子はいかにして私たちの人生を変えるのか、そして私たちの人生はいかにして遺伝子を変えるのか)となっています。この“Our Lives Change Our Genes”の部分は、一見すると信じられないことのように思われます。いったいどういうことなのでしょう。

シャロン・モアレム(写真:Alex Tran)
受賞歴のある科学者、内科医、そしてノンフィクション作家で、研究と著作を通じ、医学、遺伝学、歴史、生物学をブレンドするという新しく魅力的な方法によって、人間の身体が機能する仕組みを説いている。ニューヨークのマウント・サイナイ医学大学院にて医学を修め、神経遺伝学、進化医学、人間生理学において博士号を取得。その科学的な研究は、「スーパーバグ」すなわち薬が効かない多剤耐性微生物に対する画期的な抗生物質「シデロシリン」の発見につながった。また、バイオテクノロジーやヒトの健康に関する特許を世界中で25件以上取得していて、バイオテクノロジー企業2社の共同創設者でもある。もともとはアルツハイマー病による祖父の死と遺伝病の関係を疑ったことをきっかけに医学研究の道に進んだ人物で、同病の遺伝的関係の新発見で知られるようになった。著書に、『迷惑な進化』(NHK出版)、『人はなぜSEXをするのか?』(アスペクト)があり、35を超える言語に翻訳されている。
http://sharonmoalem.com/

モアレム まずここで申し上げておきたいのは、遺伝子がいかにして発現するか、つまりエピジェネティックな現象が非常に重要だということです。

―― エピジェネティクスとは、「1世代のあいだに遺伝形質がどのように変化し、変化させられるか、さらにはその変化がどのようにして次の世代に引き継がれるかを研究する学問」と本書では述べておられます。もう少し詳しく説明していただけますか?

モアレム たとえば、台所にシンクがありますね。そこには水が出る蛇口と湯が出る蛇口があります。それぞれの蛇口をどれくらい開けるかによって、出てくる水(湯)の量と温度が決まります。

 それと同じようなことが、遺伝子にも起こります。私たちの体が、特定の毒にさらされたとします。すると、それに反応して特定の「遺伝子のスイッチ」がオンになります。こうした変化は、カフェインでさえ起こります。そのようにして日常生活で行うすべてのことが、遺伝子の働きを変え、さらにそのことが私たちの暮らし方、そして人生までも変えていくんです

―― つまり、その結果起きるエピジェネティックな変化が、将来の世代に伝わるかもしれないということですか?

モアレム そうです。この研究はとてもワクワクするものです。エピジェネティックな変化のどの程度が次世代に伝わるかは、完全にはわかっていません。マウスの実験では、かなりのストレスを受けると、それによるエピジェネティックな変化が次世代に継承されることがわかっています。しかもそれは、数世代にわたって継承されます。

―― 特定の遺伝子のスイッチがオンになったことは、どうやってわかるのでしょうか。

モアレム 遺伝子のスイッチがオンになったのか、オフになったのかを調べるテストがあります。逆に現在のところ非常に難しいのは、脳内のエピジェネティックな変化と肝臓のエピジェネティックな変化が同じかどうかを知ることです。こうした「まだわからないこと」が、この分野の研究を難しくさせているところでもあるし、一方でワクワクさせるところでもあります。

 たとえば、運動が重要であることはわかっていますし、時には少し辛いものを食べたほうが体にいい、ということもわかっています。なぜ体にいいかというと、つまるところそれは特定の遺伝子のスイッチをオンにするから、ということです。

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シャロン・モアレム(Sharon Moalem MD, PhD)

受賞歴のある科学者、内科医、そしてノンフィクション作家で、研究と著作を通じ、医学、遺伝学、歴史、生物学をブレンドするという新しく魅力的な方法によって、人間の身体が機能する仕組みを説いている。ニューヨークのマウント・サイナイ医学大学院にて医学を修め、神経遺伝学、進化医学、人間生理学において博士号を取得。その科学的な研究は、「スーパーバグ」すなわち薬が効かない多剤耐性微生物に対する画期的な抗生物質「シデロシリン」の発見につながった。また、バイオテクノロジーやヒトの健康に関する特許を世界中で25件以上取得していて、バイオテクノロジー企業2社の共同創設者でもある。
もともとはアルツハイマー病による祖父の死と遺伝病の関係を疑ったことをきっかけに医学研究の道に進んだ人物で、同病の遺伝的関係の新発見で知られるようになった。希少疾患や遺伝病への深い洞察は、本書においても大きく活かされている。
著書に、『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラーリストに列せられた『迷惑な進化――病気の遺伝子はどこから来たのか』(NHK出版)、『人はなぜSEXをするのか?――進化のための遺伝子の最新研究』(アスペクト)があり、35を超える言語に翻訳されている。また、医学誌『ジャーナル・オブ・アルツハイマーズ・ディジーズ』のアソシエート・エディターも務めた。
さらに彼の研究は広く一般でも注目されており、『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ニュー・サイエンティスト』誌、『タイム』誌などに掲載されたほか、テレビ番組の『ザ・デイリー・ショウ・ウィズ・ジョン・スチュワート』『ザ・トゥデイ・ショウ』などでも取り上げられている。
http://sharonmoalem.com/

中里京子(なかざと・きょうこ)

翻訳家。20年以上実務翻訳に携わった後、出版翻訳の世界に。訳書に『依存症ビジネス』『勝手に選別される世界』(ともにダイヤモンド社)、『ハチはなぜ大量死したのか』(文藝春秋)、『不死細胞ヒーラ』『ぼくは科学の力で世界を変えることに決めた』(ともに講談社)、『食べられないために』『ファルマゲドン』(ともにみすず書房)、『おいしさの人類史』『描かれた病』(ともに河出書房新社)、『チャップリン自伝』(新潮社)など。


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