私がかつて20年ほどお世話になった経産省は、原発事故以来、菅首相の攻撃対象としてすっかり悪者になってしまいました。しかし、問題が多いのも事実。もういっそ経産省は、“解体的出直し”といった甘い次元ではなく、解体すべきではないでしょうか。

経産省の罪

 実際、経産省の罪はたくさんあります。原発事故への対応では、官邸が混乱していて可哀想だった面もありますが、保安院は多くの対応ミスや情報開示の遅れなど、人命に関わる言い訳できない失敗をしています。

 そして何よりも、事前の安全規制に問題があった面は否めません。“耐震設計審査指針”全15ページのうち津波への言及はわずか3行のみで、そこで想定された福島第一原発の津波の高さも、震災時の14メートルを遥かに下回る5.7メートルでしかありませんでした。こうした規制の甘さは、経産省の幹部と電力会社の密接な関係の延長と言われても仕方ないでしょう。

 そして、原発事故の損害賠償スキームにおいても、中堅クラスはともかく幹部は東京電力の延命を優先し、かつ事故の責任のある経産省は予算の削減と供出などの痛みを何も負っていないのに、安易に電力料金に転嫁しようとしています。

 更に言えば、原発の再稼働を急ぐあまり、6月18日に海江田大臣が安全宣言をする根拠となった2回目の緊急安全対策は、実質わずか一週間で取りまとめ、水素爆発への対応などは今後時間をかけて対応と答えた原発も多いのに、安全より電力不足の経済への影響を優先して安全宣言しました。保安院は自らの役割を放棄したに等しいです。

 それに加え、不祥事も目立ちます。保安院の西山英彦前審議官の不倫もさることながら、資エ庁前次長のインサイダー取引疑惑まで出てきて、組織内のガバナンスの欠如も明らかです。

 そして極めつけは、今やすっかり有名人になってしまった古賀茂明さん(経産省大臣官房付)に対する勧奨退職です。本日7月15日に退職しろと事務次官から言われているようですが、そもそも民主党政権はこうした勧奨退職は禁止したはず。政権が禁ずることを堂々とやり、有能な人材を省益に沿わないという理由だけでクビにして国のために活用しないというのは、行政組織としては失格です。