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香山リカの「こころの復興」で大切なこと
【第13回】 2011年7月15日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

震災の「見えない被害」の総和は計り知れない

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震災の被害額に含まれていないもの

 さる6月24日、内閣府は東日本大震災の被害額が16兆9000億円にのぼるという推計を発表しました。阪神・淡路大震災(9兆6000億円)の1.8倍という驚くべき数字ですが、原発事故の周辺被害は除外されるなど、最終的にこの数字がいったいどこまで膨らんでいくのか想像もできません。

 この金額には、さらに反映されていない被害があります。それは「こころの被害」とも言うべき損害です。こころに負った傷を数字に置き換えるのは難しいですが、アフターケアをするための費用は、まったくカウントされていないのです。

 東京に住む臨床心理士が、東京電力を相手取って訴訟を起こしています。

 「自分はこの原発事故で精神的ダメージを受けた。正確な情報を得られず、恐怖感や不安が高まった」として補償を要求しています。

 震災で家族を失った人、家を失った人、職を失った人などへは、十分とはとても言えませんが補償の対象となっています。これら「見えやすい損失」だけでも相当に大きいのです。しかしさらにこころに負った「見えない損害」も、今回の震災では、計り知れないほどの大きさではないでしょうか。

 東京電力は、事故によって避難している人の精神的苦痛に対する損害額として880億円を見込むと発表しました。安すぎる、根拠がわからないという批判を受けています。それと同時に、避難に伴う精神的被害に限定されていいのかという問題も考えなければならないのではないでしょうか。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「こころの復興」で大切なこと

震災によって多くの人が衝撃的な体験をし、その傷はいまだ癒されていない。いまなお不安感に苛まれている人。余震や原発事故処理の経過などに神経を尖らせている人。無気力感が続いている人。また、普段以上に張り切っている人。その反応はまちまちだが、現実をはるかに超えた経験をしたことで、多く人が異常事態への反応を示しているのではないだろうか。この連載では、精神科医の香山リカさんが、「こころの異変」にどのように対応し「こころの復興」の上で大切なことは何かについて語る。

「香山リカの「こころの復興」で大切なこと」

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