ニュースな本写真はイメージです Photo:PIXTA

今や国民の8割が歯周病と言われており、大人になってから罹患した場合の治療費は400万円にものぼるという。日本で数少ない日本歯周病学会指導医である筆者が、“赤ちゃんからはじめる予防歯科”の重要性を説く。本稿は、多保学『10000人の患者を診た歯周病専門医が導き出した 0歳から100歳までの これからの「歯の教科書」』(イースト・プレス)の一部を抜粋・編集したものです。

自由診療のセラミックと
保険診療の銀歯の予後は雲泥の差!?

 なぜ歯医者さんの治療はこんなにお金がかかるの?

 難症例の患者さんがよく思う疑問だと思います。

 例えば、1本の虫歯を治療する場合、かかる医療費は虫歯を削って型を取り、その後銀歯もしくはセラミックを入れる費用の総額になります。詰め物には、保険診療でカバーされる銀歯から自由診療で行うセラミックまでさまざまなものがあります。保険診療だと約1万円、自由診療のセラミックだと約10万円の支払いになります。

 日本の社会保障制度の中に国民皆保険というものがあります。多くの70歳未満の方が医療費の支払いが3割負担で済んでいるのは、この国民皆保険というものを使っているからです。日本では、この国民皆保険を使い、医療を受けるというのが常識です。そのため、歯科治療=医療費が安いという方程式が成り立っているように思います。この国民皆保険という制度は、国民の皆が平等に医療を受けるという側面から見ると、非常に優れたシステムだと思います。

 しかし、裏を返すと国民皆保険を使った保険診療では、診査・診断の制限、診療器具、診療材料の制限、そういった負の側面もあります。私はよく従業員に「自分の患者さんは自分の家族だと思って、診療に当たりなさい」と話をしています。患者さんにとってベストな診療を行うにあたり、逆に保険診療での制限が弊害になることがよくあります。そのため、患者さんの真の利益を追求しようとすると、保険診療では治療自体が難しい場面にしばしば遭遇します。

 例えば、冒頭に話を出したセラミックなどは型の取り方や型取りの材料も違えば、歯科技工士さんという作り手も違います。自由診療専門の歯科技工士さんが顕微鏡を用いて何十倍という作業視野の中で丁寧に時間をかけ作るセラミックと、保険診療専門の歯科技工士さんが時間のない中で流れ作業で作る保険診療の銀歯とでは大違いです。歯につけるセメントも違います。