一流の経営者やリーダーは何をやっているのか? 人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊『経営者の教科書』(ダイヤモンド社)は、その20年以上の経験から成功する経営者・リーダーになるための極意をまとめた本です。本連載では、同書の中から抜粋して、成功するリーダーになるための考え方と行動について、くわしく解説していきます。

成功するリーダーは、「正しい努力」を「積み重ねる」

経営は実践で結果がすべて

 経営コンサルタントとして独立して、早いもので22年目になりました。その間、多くの会社の経営に関わり、多くの経営者とお付き合いをしてきました。

 大成功した会社もある一方、お恥ずかしい話ですが、独立して初期の頃には、うまくいかなかった会社も数社あります。

 私は、自分は「経営者のコーチ」だと思っています。お客さまに成功していただくため、会社として何をなすべきか、そして経営者としての実力を高めるためには、何をする必要があるのかをお教えするのがコーチの仕事です。  

 現在、社外役員と顧問をしている会社が合計で10数社ほどあり、また、セミナー会員さんが400社ほどありますので、多くの会社や経営者と日々関わっています。

 また、小宮コンサルタンツという10人ほどの小さな会社を経営しながらも、考えることが沢山あります。

 その中で、実践で成功するための経営の本質やそれを行う方法を常に考えてきました。それをお教えする、または、お伝えするのが私の仕事です。

「経営」とは何をすることなのか?

 経営とは(1)「企業の方向づけ」(2)「資源の最適配分」(3)「人を動かす」の3つのことをやることだと思っています。

 これらを言葉のうえだけで理解することは、それほど難しくありません。

 しかし、経営は実践がすべてです。

 実践で結果を出さなければ、誰も評価はしません。それでは、お客さまも従業員さんも幸せになれず、社会にも貢献できません。

 実践で結果を出すことはそれほど容易なことではありませんが、最適な訓練やトレーニングを積めば、誰でもある程度の結果を出せると私は思っています。

「正しい努力」を「積み重ねる」

 私には持論があります。

 経営でもなんでもそうですが、「結果」を出すためには「正しい努力の積み重ね」が必要です。

 「正しい努力の積み重ね」。この言葉には、キーワードが2つあります。「正しい努力」と「積み重ね」です。

 まず、「正しい努力」についてですが、例えば、プロ野球選手になりたいという人が、毎日十時間、必死で卓球を練習しても、プロ野球選手には絶対になれません。プロ野球選手になりたければ、然るべき野球の練習をしなければいけないのです。

 同じように、経営者やリーダーとして成功するためには、もちろん、そのための正しい努力があるのです。そして、経営には「基本」があります。それを知り、身につけない限り、いくら他の技術的なことを身につけても成功はできません。

 まずは、その「正しい努力」が何かを、知らないといけないのです。

 そのために、先ほど説明した「企業の方向づけ」「資源の最適配分」「人を動かす」のそれぞれに関して、経営者やリーダーとしての実力を高めるための「正しい努力」とは何かを、本連載では説明していきます。

 後は、それを「積み重ねる」こと。紙一重の積み重ねで、どれだけ積み重ねるかです。積み重ねれば、ある一定水準までは必ずレベルが上がります。

 それはゴルフの練習と一緒で、ある程度、基本となるスイングを知ったうえで練習を積み重ねていくと、皆が皆プロになれるかどうかは分かりませんが、ある一定のレベルまでは必ず上達するのです。

 大切なことは、「経営」というものの本質は何かということを知ったうえで、その実力を高めるための正しい努力を積み重ねていくことです。

 経営はあくまでも実践で結果を出すことですが、基本的な原理・原則や成功する経営者の考え方、知識を理解することが、とても重要です。無手勝流では、勝てる試合にも勝てません。

 松下幸之助さんは「人生もビジネスも自然にうまくいくようになっている」とおっしゃっていますが、その自然にうまくいく方法や考え方を、皆さまに学んでいただきたいと思います。

「幸せ」と「成功」の違い

 ところで、私はよく講演会などで「『幸せ』と『成功』の違いは分かりますか」という質問をします。皆さんは分かりますか?

 「幸せ」とは、自分で感じるものです。他人がどう言おうと、自分が幸せと思っていれば幸せなのです。

 一方、「成功」は他人が決めるものだと私は考えています。自分で成功だと思っていても、周りの人や社会が評価しない限り成功ではないのです。

 経営者やビジネスパーソンとしては、成功して幸せな人生を送るのがベストであることは言うまでもありません。幸せなだけなら自己満足かもしれませんし、成功したとしても幸せでなければ、人生の充実度は低いでしょう。

 成功について、なぜ成功したほうがいいのかということもきちっと理解しておくべきです。今話したように、周りや社会が評価することが成功だということは、それだけそれらの人たちに貢献し、喜んでもらっているからです。人に喜んでもらうことの裏返しが、自身の成功なのです。だから成功することは尊いのです。

 ビジネスの世界では、成功することで幸せになるという気持ちが大切です。  

 この度上梓した『経営者の教科書』は、皆さんに仕事で成功していただくための本ですが、それとともに幸せな人生を送っていただくための本でもあるのです。そういう点において、この本は私の経営に対する考え方を網羅した、いわば私の経営書の集大成です。

 私が皆さんに伝えようとしていることは、経営の基本的な原理・原則や技とともに、経営に対する考え方です。そして、それを得るための「正しい努力」です。

 私が伝えようとしている事は、これまでの私の経験から、おそらく一番成功確率が高いであろうと思われる実践での経営のやり方であり、リーダーの考え方と行動です。そのための学習方法もそうです。

 本連載では、成功する経営者やリーダーは何をやっているのか、経営を成功させるための「正しい努力」とは何か等についてご説明していきます。皆さんの仕事や人生に、少しでもお役に立つことを願っていますので、よろしくお付き合いください。

小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
十数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行に入行。84年から2年間米国ダートマス大学経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『ドラッカーが「マネジメント」でいちばん伝えたかったこと。』(ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(東洋経済新報社)他、100冊以上がある。

※次回は、6月26日掲載予定です。