G20金融安定理事会が目指す規制強化
頻発する金融危機の封じ込めは本当に可能か
世界的な金融危機の連鎖を防ぐために、足もとで主要国が連携して金融機関に対するルールを作る機運が高まっている。
その背景には、2008年9月のリーマンショックによって、世界経済が大きく落ち込んだ苦い経験や、最近の欧州のソブリンリスクの高まりなどの要因がある。金融機関に規制の網をかぶせて、今後大規模な金融危機の連鎖が発生することを防ぐのが狙いだ。
具体的には、7月中旬に開催された金融安定理事会(G20の中央銀行や金融監督当局が設立した機関FSB=Financial Stability Board)で、影響の大きい世界の大手金融機関30社に対する規制を強化する方向が合意され、規制の詳細を今年11月に決めるプロセスに入った。
今回の規制強化の主な内容は、大手金融機関が独自に危機対応のための事前プランを作成することを義務付けることと、実際に大手金融機関が破綻したときの法的整理手続きを明確化することの2つが中心になると見られる。
多くのケースで、一般人は政府が金融機関の救済のために多額の公的資金を注入することには否定的だ。そのため、政府が国民の間でコンセンサスをつくる時間を必要とし、その間に連鎖的に金融危機の規模が拡大してしまうことが多かった。
その経験を踏まえて、事前にルールを明確にしておくことによって、“金融危機連鎖”の防止を図ろうというのが主な意図だ。
ただし、そうした規制にどれだけの連鎖阻止効果があるかは、専門家の間でも議論が分かれる。世界的な規制によって、金融機関の経営に対して大きな影響が期待できるとの見方がある一方、大手金融機関は何かしら抜け道を考案する可能性が高いとの意見もある。
また、「規制対象を特定の大手金融機関に限定することは適切ではない」との声もある。金融機関に対する規制は、これからも試行錯誤で内容を改善していく以外に、有効な方法はないだろう。