食は、どうなる。
【最終回】 2011年7月27日 足立直樹

どうすれば、安全でおいしい食を選ぶことができるのか

 前回の記事で、市場に出回っている食品が安全だと考えるのは危険だと述べましたが、心配していたことがその直後に起きてしまいました。放射能で汚染された稲ワラを食べた牛の肉が放射性セシウムによって汚染されていて、それが既に全国で出荷・流通・販売され、一部は既に消費されてしまっていることが分かったのです。

 こうなると、乳牛や豚、鶏、それ以外の畜産物はどうなのかと心配になります。

 最近の報道によれば、静岡県の下田港と伊東港で、放射能で汚染されたヒラメやブリが水揚げされたとのことです。底生魚であまり移動しないヒラメが汚染されたということは、ついに静岡県の海まで放射性物質が広がっているということであり、大変ショッキングなニュースです。また、ブリは海の生態系の頂点に近い捕食者ですので、それが汚染されているということは、海の中の生態系にも汚染が広がっていることを示唆しています。

汚染の広がり方の速さも
現在の食のリスクの一つ

 汚染牛については、稲ワラの移動を禁じなかった国の責任が追及されていますが、その他の飼料・肥料についてもまだまだリスクが潜在します。現在、農水省は放射性物質を含む下水やし尿などの汚泥であっても、放射性セシウムが1キロ当たり200ベクレル以下であれば肥料の原料として利用することを認める基準を作っています。本来であれば汚染物質の拡散はなんとしても防ぐべきだと思いますが、放射性物質で汚染された汚泥が肥料として日本全国にバラ撒かれ、西日本や九州の農地まで、放射性物質で汚染される可能性も出てきます。

 それにしても、エサも牛肉も、よくぞこんなに短時間に全国津々浦々へ流通したものだと感心します。今回の汚染牛に見るように、汚染の広がり方の速さも、現在の食のリスクの一つと言えるかもしれません。

 こうした現状を考えると、残念ながら、今後国内で放射性物質に汚染されていない安全な食品を入手することはどんどん難しくなっていくと予想せざるを得ません。

 また、こうした食への不安感が、食材の市場価格にも影響を及ぼしています。牛肉に関して言えば、既に牛肉の卸値は3分の1にまで暴落しているというニュースも流れており、このような状態が続けば、畜産業、漁業、農業は成り立たなくなるという最悪の展開も考えられます。

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足立直樹

東京大学理学部卒、同大学院で理学博士号取得。国立環境研究所、マレーシア森林研究所(FRIM)を経て、コンサルタントとして独立。専門分野はCSR、環境経営、環境コミュニケーション。日本生態学会常任委員、環境経営学会理事、環境省生物多様性広報・参画推進委員会委員、環境省生物多様性企業活動ガイドライン検討会委員、国際NGOナチュラル・ステップ・ジャパン理事、サステナビリティ日本フォーラム運営委員などを務める。


食は、どうなる。

現在、私たちをとりまく食の背景には、安全性の問題や、気候変動の影響など、とても複雑な事情や問題が絡み合っています。私たちが食べているものを様々な視点から見て、私たちの命を支えている食の仕組みをあらためて考えてみましょう。

「食は、どうなる。」

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