「システムに欠陥が多すぎて使えない!」
「開発や保守・運用費用が高すぎる!」
「なぜか社員が協力してくれない……」
「経営者がシステムのことを全然わかってない……」

ホームページ、ECサイト、Webマーケティングシステム、AI、ビッグデータ、IOTなど、ITシステムが企業の経営を左右する時代。……にもかかわらず、ほんの数年前まで、日本のITシステム開発は3分の2が失敗しており、今もなお、システム開発は他のプロジェクトと比べると成功率の低いのが現状です。

そこで、かつてない「発注者のための入門書」として、発売早々重版が決まった『システムを「外注」するときに読む本』。本連載では、そのエッセンスを大公開。70以上のトラブルプロジェクトを解決に導き、紛争解決率9割を超えた「トラブル解決請負人」が、システム開発プロセスに潜む「地雷」を紹介しながら、成功のポイントを伝えます。

なぜ、自社の社員なのに、協力してくれないのか?

あなたの会社や組織でシステム開発を行なうとき、新しいシステムのエンドユーザーとなる部門の人は、本来の業務を休んででも、システム担当者に協力してくれるでしょうか。

あるいは、エンドユーザー部門の人が、積極的にプロジェクトに参画するような「しくみ」や「風土」があるでしょうか。

実は、システム担当者の大きな悩みの1つは、「社員が協力してくれない」ということにあります。システム開発プロジェクトにおいて、社員の非協力な態度は、最大の危機をもたらすことになります。

では、なぜ、自社を幸せにするシステムを作ろうとしているのに、社員が協力してくれないという事態が起きるのか。今回は、その過程を『システムを「外注」するときに読む本』の一部を抜粋する形で、追体験していただきたいと思います。

-------以下、『システムを「外注」するときに読む本』第4章より抜粋

赤羽大輔は、大手スーパーチェーン「京浜マーケット」のシステム開発課長だ。

赤羽は、ここ数日、新システム「京浜マーケット御用聞きシステム」の開発について、社内の各部署にヒアリングしたときの会話を思い出していた。

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「意見の取りまとめはいかがですか。『今日までには必ず』と、石川部長おっしゃいましたよね?」
「悪い悪い。マーケティング部はいろいろと忙しくてさ。近々、若い連中に要望を聞いとくから」

「……え? まだヒアリングもされてないということですか? もう約束の期限を2週間も過ぎているんですよ?」
「仕方ないじゃない。赤羽さんもわかってるでしょ? 何せウチは京浜マーケットの要だ。お客さんの好みや流行や天候までを敏感にキャッチして、品揃えや宣伝に関する指示をリアルタイムで店舗に出さなきゃならないんだから。忙しいんだよ。みんな」

「この御用聞きシステムは、社長肝いりの新企画です。もう少し、本腰を入れていただくわけには参りませんか?」
「は? うちが非協力的だとでも言いたいの? おいおい冗談じゃないよ。今日だってアンタがあんまりしつこいからわざわざ時間を作ったってのに、そんなことを言われる筋合いないよ!

「いえ、決してそんなつもりでは……」
「ウチはね、この京浜の売上を直接左右する重要部門なんだ。日がな1日、パソコンいじってりゃ自然と給料が入ってくるシステム屋さんとは違うんだよ!

システム担当者が社内で「孤立」するリアルな過程会社のために頑張っているのに……