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岸博幸のクリエイティブ国富論

原子力損害賠償法案の修正を許すな!
東電を債務超過にしないというフィクション

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第148回】 2011年7月29日
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 国会で審議中の原子力損害賠償支援機構法案の修正について、与野党が合意しました。しかし、合意内容を見ると、元々の法案よりも東電に対して更に甘くなりました。東電を正しく再生するのではなく、何があっても絶対に延命させるんだという経産省の意向が反映されたとしか思えません。こんな修正を許して良いのでしょうか。

国の責任=税金負担の増加?

 今回の与野党合意でもっとも問題なのは、実質的に東電に国費を無限定に投入できる仕組みを作ったことです。

 元々の法案では、東電に賠償資金を援助する機構に対して、国は予算を直接投入するのではなく国債を交付する形にしていました(交付国債)。いずれは国に資金を返済させることを想定していたのです。

 ところが、与野党合意によって新たな条文が追加されて、交付国債による資金で不足が生じる場合に、返済義務のない純然たる予算を国が機構に直接投入できるようになりました。機構から東電に対して資金援助が行われることを考えると、機構経由で国から東電に無限定に資金を投入することが可能になったのです。

 メディアは今回の与野党合意について、原発事故に対する国の責任が明確化されたと報道しています。原子力発電所は実質的には電力会社と国の共同経営の面があったことを考えると、原発事故の責任は国も負うべきですので、国の責任を明確化すること自体は正しいと言えます。

 しかし、国の責任の取り方とは本来、関係省庁の幹部が相応の責任を取るとか、既存の巨額の原子力推進予算を賠償の原資に回すなど、国民負担を伴わない形で行われるべきです。原発事故の責任は東電と国にあり、国民にはないからです。それなのに、今回の与野党合意では、国の責任という名目の下で、国民負担に直結する予算投入のみが可能とされたのです。これほど安易な国民へのツケ回しはないのではないでしょうか。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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