なるほど、それなら「ながら聴き」とはまた違う音楽との向き合い方も出てくるに違いない。そして近ごろではソニーのXperiaなど、ハイレゾ音源に対応したスマホも出てきてはいるが、5.1chサラウンドのスピーカーやプリメインアンプを家庭に揃えるには少なからぬ費用もかかる。

 そこで時代を振り返ると、かつて音楽レコードが高価だった時代に、コーヒー一杯で様々な楽曲が高品位な音響装置で楽しめる場として「ジャズ喫茶」が全国にあった。ハイレゾというCDの約6.5倍もの情報量を持つ新規格が世に出始めたいま、音源や再生装置の販促も兼ねて、ハイレゾのいい音を気軽に体験できる「21世紀版ジャズ喫茶」のようなお店が出てくれば、そこに新たな商機も生まれるのではないか?そう考えて、筆者は下調べを開始した。

ミュージックバーの
開設を決意する

 だが調べてみると、ジャズ喫茶のハイレゾ版のようなお店はあまり見つからなかった。そこで、このスタイルのお店として恐らくもっとも有名な東京・新宿にある「Spincoaster Music Bar」に取材をし、話を聞くことにした。

店外の電飾看板にもレコード盤があしらわれ、ハイレゾ/アナログ双方への対応が理解しやすくなっている

 同店はJR新宿駅の近くにあり、元ジャズバーを改装したもの。2013年スタートの音楽メディア事業を主軸とする株式会社Spincoasterが、2015年3月にオープンさせた。林潤社長は学生時代にITベンチャー創業メンバーとしてIT業界に3年間携わり、社会人として大手レコード会社で音楽業界に6年間携わり、その後独立した経歴の持ち主。2014年の組織法人化をきっかけに、「音楽を通じたコミュニケーションを豊かに」という想いを実現するための別のあり方を模索し、ミュージックバーの開設を決意した。そしてクラウドファンディング(インターネットを通じて共感した不特定多数の人から資金を集める方法)で出資を募り、目標額の2倍もの資金を得て、開店に漕ぎつけた。
 
「音楽好きな人たちのコミュニケーションをもっと盛り上げるには、Webメディアだけでは限界がある。音質のよい音、会話、お酒、人々の偶然の出会い、それらを実現するにはリアルな場所が必要で、たどり着いた答えがミュージックバーでした」(林社長)

 そんな「Spincoaster Music Bar」は、ハイレゾとアナログの音源を多数取り揃え、それぞれに対応した音響装置を別々に用意していることが特徴だ。音楽配信サイトの「mora」や「OTOTOY」から音源の協賛を、そしてSonyやEastern Sound Factory社から機材の協賛を受けることで実現した仕組みだ。