「針」を使わないレコード再生、独自の高音質技術は普及するか開発を担当してきた関塚正幸・エルプ生産部部長(左)と普及のためのイベントを担当する竹内孝幸・エルプ企画・営業部長(右) Photo by Toshiaki Usami

 レーザーターンテーブルで故美空ひばりのレコードを再生したときのことだった。聴いていた美空ひばりの義理の娘が感極まって「お母さんがそこにいる」と泣きだしたという。まるで故人が目の前で歌っているかのように感じるほど、深みと奥行きのある音だったのだ。

 通常、レコードの再生には針を使用する。針をレコードの溝に当てて音を再生する。一方、レーザーターンテーブルは、レーザーをレコードの溝に当てて反射した光を読み取り、電気信号に換えて音を再生するものだ。

 針で再生する場合、レコードを回転させながら針を当てる際にどうしても雑音が発生してしまう。また、溝に刻まれた音の全てを再生することはできない。しかしレーザーターンテーブルであれば、溝に刻まれた音のほぼ全てを原音に忠実に再生できる。

 また、普段われわれが聴いているCDは50ヘルツ以下の低音と20キロヘルツ以上の高音をカットしているが、レーザーターンテーブルはレコードに刻まれた音を超高音域も含めそのまま再生する。それ故、収録時の楽器同士の位置関係が明確に分かり、歌手とマイクの距離感までもが分かる、深い奥行きが感じられる音になる。