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日本人のための平和論
【第2回】 2017年7月13日
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ヨハン・ガルトゥング

尖閣・沖縄・米軍基地問題に解決策はあるのか?
キーワードで読み解くガルトゥング平和論<2> 領土問題・沖縄・安全保障編

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ヨハン・ガルトゥングが日本への緊急提言として著した『日本人のための平和論』。そのエッセンスをキーワードで紹介する連載の2回目は、近隣諸国とのあいだに存在する領土問題、日本の安全保障問題、沖縄問題、憲法改正問題などについて。(構成・御立英史)

「領土問題」の非軍事的解決策

領土を、自国のものか相手国のものかというゼロサム・ゲームと見るなら、あらゆる論争は軍事的衝突へとエスカレートするしかない。国家が武力を保有するおもな理由は、まさに領土を守るためである。だがガルトゥングは、領土問題にはあきらかに2つの非軍事的解決策が存在すると考える。

領土問題には、あきらかに2つの非軍事的解決策が存在する。一つは、係争地域を共同で所有すること。もう一つは、国境を廃して互いの通行を自由化すること。なぜなら、領土をめぐる争いは国境をどこに定めるかという争いにほかならないからである。(中略)人間は戦ってでも獲得する価値がある何かがあるときに戦おうとする。その「何か」を取り除くことができれば、多くの争いや戦いは自然消滅するだろう。(p.64。以下ページ数はすべて『日本人のための平和論』

「領土の共同所有」とは?

領土問題の非軍事的解決策のひとつ、領土の共同所有とは、領有権争いのある地域を共同で管理し、そこからから得られる利益を配分するという方法である。ガルトゥングは、尖閣諸島(釣魚島)については2つのチャイナ(中国と台湾)に40%、日本に40%、環境保全や管理等に20%を配分することを提案している。竹島(独島)についても同様で、日本に40%、2つのコリア(北朝鮮と韓国)に40%、環境保全等に20%を配分することを提案している。北方四島については日本に30%、ロシアに30%、環境保全等に20%、残る20%はアイヌの人々に配分することを提案している。

現実離れしていると感じるだろうか。私の過去65年におよぶ経験とこの目で見たさまざまな成功事例から、即座ではないとしても、それは必ず実現可能だということを断言する。(中略)
私はこれまで、領土問題や国境をめぐる争いのあるところで、つねに同様の前向きな解決策を探求し、議論の場に持ち出してきた。私の提案はきわめて現実的なものだ。パワー・ポリティクス(権力政治)の世界で言う「現実主義」とか「現実的政治」とは違うが、それらよりもっと現実的である。(p.61-62)

すでにガルトゥングは中国の政府関係者にこの提案を行っており、きわめて前向きな反応を得ていることを『日本人のための平和論』の中で明かしている。

私たちは、尖閣を日本と中国のあいだの緊張の原因とするのではなく、平和を生み出す地にしなくてはならない。島の領有権をめぐる対立を、平和のために両国が協力する拠点となるように、天が与えてくれた贈り物と考えるべきなのである。(p.61)

次のページ>> 「国境の開放」とは?
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ヨハン・ガルトゥング

1930 年、オスロ生まれ。社会学者。紛争調停人。多くの国際紛争の現場で問題解決のために働くとともに、諸学を総合した平和研究を推進した。長年にわたる貢献により「平和学の父」と呼ばれる。「積極的平和」「構造的暴力」の概念の提唱者としても知られる。自身が創設したトランセンドの代表として、平和の文化を築くために精力的に活動している。創立や創刊に関わった機関に、オスロ平和研究所(PRIO)(1959)、平和研究ジャーナル(Journal of Peace Research) (1964)、トランセンド(1993)、トランセンド平和大学(TPU)(2004)、トランセンド平和大学出版局(2008)がある。委員あるいはアドバイザーとして、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、国連児童基金(UNICEF)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、国連食糧農業機関(FAO)などの国連機関で、また欧州連合(EU)、経済協力開発機(OECD)、欧州評議会、北欧理事会などでも重要な役割を果たした。教育面では多くの大学で学生を指導した。客員教授として訪れた大学は世界各国で 60近いが、そのなかには日本の国際基督教大学、中央大学、創価大学、立命館大学も含まれる。名誉博士、名誉教授の称号は 14 を数える。平和や人権の分野で、ライト・ライブリフッド賞(“ もうひとつのノーベル賞 "、ノルウェー・ヒューマニスト賞、ソクラテス賞(ストックホルム)、ノルウェー文学賞、DMZ( 非武装地帯 )平和賞(韓国)、ガンジー・キング・コミュニティ・ビルダー賞(米国)など 30 以上の賞を受賞している。


日本人のための平和論

北朝鮮問題、領土問題、拡張する中国、暴走するトランプ・アメリカ 
数々の国際紛争を調停してきた平和学の世界的権威が、いま日本のため、緊急提言する。

「日本人のための平和論」

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