旧弊打破で超効率化を実現<br />大手と渡り合う新興広告代理店<br />グローバーズグローバーズ
左から
最高執行責任者 福井俊策
最高経営責任者 内山俊哉
最高戦略責任者 大久保隆千栄
Photo by Kazutoshi Sumitomo

「広告業界は時代の先端を読むべきなのに、まったくできていない」

 日焼けした肌に瀟洒なスーツを着こなし、足元は裸足に革靴。見た目はイケイケの広告代理店マンを地で行く内山俊哉(写真中央)は、自らが20年以上も身を置いてきた広告業界に、限界を感じていた。

「既存の広告代理店にはできない広告モデルをつくりたい」

 インターネット広告の台頭によって、旧来型の広告モデルが転換を迫られていた2007年、同じ思いを抱いていたかつてのライバル、福井俊策(同左)と大久保隆千栄(同右)の3人で、グローバーズを立ち上げた。

 3人はもともと、大手広告代理店の部長で、内山は媒体部門、福井、大久保がそれぞれ営業、マーケティング部門の出身だ。各部門のプロフェッショナルとしてらつ腕を振るってきた3人によるトロイカ体制で、同社は船出した。

 しかし、現実は甘くなかった。大手代理店の敏腕部長だったとはいえ、新会社での実績はゼロ。創業当初は電話もコピー機も借りられず、住宅ローンの一括返済を余儀なくされた者もいた。

 それでも3人には確信があった。「大手代理店の提案は場合によっては、自社都合が優先されて割高になりがちで、顧客志向を追求すれば成功できる」。

 チャンスは意外と早く訪れる。薄毛に悩む男性をターゲットにした薬用シャンプー「スカルプD」のコンペで並み居る大手を退け勝利したのだ。

 いまや誰もが知る人気商品だが発売当初は苦戦。グラビアアイドルを起用した大手代理店の販売戦略の不調もあり、売上高が目標に達していなかった。

 08年、広告体制のテコ入れのため、再度のコンペが行われた。大手が大々的なテレビCMによるプロモーションを打ち出したのに対し、同社はその逆張り作戦に出る。

 3人は高額なCMを打たず、イベントやネットでの地道な販促を訴え、クライアントの心をつかんだ。

 薄毛に悩む吉本興業の人気お笑いコンビ「雨上がり決死隊」の宮迫博之らと「K(ケー)‐BO(ボー)‐BO(ボー)‐プロジェクト」を企画。1年間を話題づくりに費やし、09年に満を持してCM展開すると、大きな反響を呼ぶ。

 10年度には、国内最大の電子商店街「楽天市場」で6800万点の商品のうち、スカルプDが年間総合ランキングでトップに立つ快挙を成し遂げた。