印象に残る現象だけで決めつける
「利用可能性ヒューリスティック」

 われわれが老後に国から受け取る公的年金。その資金の運用は「年金積立金管理運用独立行政法人」が行っている。一般的には英語名の頭文字をとってGPIF(Government Pension Investment Fund)と呼ばれている独立行政法人だ。

 以前は特殊法人である「年金福祉事業団」が「旧大蔵省資金運用部」に預託していた。それが、2013年に第二次橋本内閣の特殊法人改革によって事業団が廃止され、以後何度かの変遷を経て、現在はGPIFが行うようになった。

 以前からGPIFについては、損失が出た時に大きく報道されることもあり、あまりいい印象を持たれていないような気がする。ところが実態は違う。公的年金の仕組みがあまりよく知られていないこともあって、どうやら誤解されているようなのだ。

 実際、街でテレビ局がインタビューしている様子などを見ていると、「年金財政は破綻している」とか「年金の運用は大赤字だ」といったコメントが良く出てくる。しかしこれは実態と全く異なる。年金財政は破綻しているわけでもないし、年金運用が必ずしも大赤字ということでもない。

 にもかかわらず多くの人がそれを知らない、あるいは誤って信じているというのは一体なぜなのか。

 ずばり、年金に対する信頼性が高くないということに尽きるだろう。