ROIC経営の先駆者として知られるオムロンで、CFO兼グローバル戦略本部長を務めた日戸興史氏は、究極の目的が企業価値の持続的向上にあるという点で、ROIC経営と人的資本経営の本質は同じだと指摘する。一方、数々の企業の人的資本経営の実践を支援するアビームコンサルティングの久保田勇輝氏は、その本質は価値創造ストーリーのロジックを組み立て、CxOで構成される経営チームがその実行にコミットし、経営戦略と事業戦略および人材戦略のベクトルを合わせることであり、あくまでも企業価値の持続的向上に寄与すべきものだと考える。人的資本経営をテーマにしながら、経営の本質や経営チームのあり方などについて、両者が議論を深める。
企業価値向上との因果関係をロジカルに突き詰める
久保田 有価証券報告書で人的資本の開示が義務づけられ、「人的資本報告書」を発行する企業も増えるなど、人的資本経営への注目が高まっています。ただ、企業価値の向上という本質にかなう人材面からの戦略・施策という観点でとらえている企業がどのぐらいあるか。私は数多くの企業の支援をする中で、その点を非常に憂慮しています。日本における人的資本経営の現状について、日戸さんはどのようにご覧になっていますか。