東京エイムに上場したメビオファームの藤澤忠司社長。値が付かない事態を受け、「今後、事業で結果を出して市場の評価を得たい」と述べた
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 この7月、東京証券取引所が新たに開設した“プロ向け市場”でようやく上場第1号が誕生した。ところが、早くも問題が露呈している。

 このプロ向け市場の名は「東京エイム」。上場基準を緩和する一方、投資家をプロに限定することで長期保有を促す新興市場だ。企業側にとっては、東証マザーズなど従来の新興市場に比べ、短期間かつ低コストで上場することが可能となる。

 これまで東証は、ロンドン証券取引所の新興市場「AIM」をモデルに、ロンドン証取と合弁で2009年6月にもこの新市場を開設していながら、2年以上にわたって上場企業数はゼロと苦戦を強いられてきた。

 そんな折、創薬ベンチャーのメビオファームがついに今年6月10日、第1号銘柄として上場を申請。24日には無事に上場承認されたとあって、東証関係者らは歓喜にわいたわけだ。

 ところがである。7月15日の上場初日から売り注文が殺到。東京エイム市場が参考値として最初に示した板の中心価格1200円に対し、なんと900円で大量の売り注文が出たまま最後まで買い手がつかず、初値が付かないという事態に陥ったのだ。

 それもそのはず。メビオ社の既存株主の約6割は、創業間もない頃から投資してきたベンチャーキャピタル(VC)。通常、5年程度のサイクルでエグジット(損益確定)したいと考えるVCの一部が、「創業9年になるメビオ社への投資の手仕舞いに走った」(市場関係者)からだ。

 メビオ社が上場と同時に開示した12年3月期の業績予想は、前期の2億5800億円の経常赤字に対し13億円の経常黒字。こうした成長予想にもかかわらず、これらVCの大半は、「1株当たりの簿価は2000~3000円」(メビオ社関係者)と高値で保有していたため、すぐにでも損失を確定したかったということになる。

 その後もVCによる売り注文は続き、4日間連続のストップ安。5日目の22日にようやく付いた初値も286円と、当初参考価格の4分の1以下となる始末だ。8月2日終値時点で、さらに123円にまで下落している。

 これには本場・ロンドン証取関係者も意気消沈。「多くの取引所と提携しているロンドン証取だが、これほどうまくいっていない事業はない」(市場関係者)だけに、「東京エイムはもう辞めたいと愚痴をこぼしている」(同)という。

 既存の新興市場に比べ、より未成熟な段階での資金調達が可能なだけに、ベンチャー企業のあいだで期待を集めていた東京エイム。だが今のところ、企業の育成といった本来の目的からかけ離れてVCに巧みに利用され、彼らの投資先株の売却の場と化している。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)

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