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スマートフォンの理想と現実

ソフトバンク、ドコモ、KDDIが競って開け始めた
スマートフォンという“パンドラの箱”の怖い中身

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第4回】 2011年8月10日
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相変わらずの好決算

 通信事業者の四半期(4-6月期)決算が概ね出揃った。ケータイ上位3社は、NTTドコモ(営業利益2677億円)、KDDI(移動通信事業で同1217億円)、ソフトバンク(移動通信事業で同1164億円)と、いずれも好調な業績を維持している。

 東日本大震災の直後でもあり、その影響も一部では懸念されていた。しかしフタを開けてみれば、契約数や端末の出荷台数等を含め、順調に成長路線を邁進しているように見える。

 もとより、通信産業は不況に強いとされてきた。全国民が広くあまねく使うものであり、また景況の如何に関わらず一定のニーズが存在する。とりわけケータイに関しては、過去5年平均の営業利益率が3社とも概ね15%前後と極めて高い。デフレや不景気はどこ吹く風、といった趣で、正しく「我が世の春」であった。

 では、ケータイ通信事業者の未来は、引き続きバラ色なのだろうか。

 確かに、これほどの好決算をはじき出す業界は、日本全体を見渡しても、ほとんどない。しかも製造業と違い、通信業界はその利益の多くは国内、しかも最終市場で稼ぎ出したものだ。現時点における収益基盤は、安泰そのものと言えるだろうし、投資先として考えても、電力事業者亡き後のディフェンシブ筆頭銘柄と言えなくもない。

 こうした短期的な見通しに立った強気の姿勢は、必ずしも間違っているわけではない。四の五の言ったところで「いま勝っている人が強い」というのは商売の鉄則だ。またカネというのはカネが回っているところに集まってくるものである。そうして余裕のあるうちに新たな経営オプションを揃えられるのであれば、勝ち続けることは十分可能だろう。

踊り場というにはまだ早いが…

 一方で、危機感を強める向きもある。収益の多くが国内市場に依存しているということは、すでに人口減少フェーズに突入した日本において、緩やかに衰退していくということに他ならない。また個人による購買が中心となれば、長引くデフレや不景気の影響をジワジワ受けているはずである。

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クロサカタツヤ[株式会社 企/株式会社TNC 代表]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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