子どもの考える力を伸ばす効果的な方法があります。それは、ビジネス書の世界的ベストセラー『ザ・ゴール』の著者、エリヤフ・ゴールドラット博士が開発した「3つの思考ツール」を活用すること。博士が設立したNPO法人「教育のためのTOC」の世界最高位資格であるマスターリード・ファシリテータとして活躍している飛田基氏の新刊『考える力の育て方』の中から、そのエッセンスをご紹介します。
今回は、前回ご説明した「ブランチ」という思考ツールを使って、世の中のルールを論理的につかんだ子どもの事例を取り上げます。アスペルガー症候群で全主要教科補習、補導歴あり、リストカットも経験したユウキは、「ブランチ」を使ってどんな解決策を出したのでしょうか?

ユウキ、私服警察官に
補導される

 ユウキは、中学校で「5人組」と呼ばれるメンバーの1人でした。この5人は校内でもやんちゃ者として有名で、ことあるごとに校長室の「叱られソファ」に座らされ、揃ってお説教をされるのです。

 その日も5人組は、「叱られソファ」に座らされていました。前日の夕方、私服警察官に学校近くの駅周辺にある繁華街で補導されたとのこと。

 経緯はこうでした。

 学校の授業が終わり、そのあと5人組は揃って補習授業を受けました。補習がようやく終わった帰り道に、誰かが尋ねました。

「ねぇねぇ、キャバクラってどんなとこか知ってる?」

「わかんない。じゃあ、行ってみよっか!」

 こんなきっかけで繁華街をウロウロしていたところを、私服警察官に見つかったのです。

 警察でこってりと絞られ、家庭でもしっかりとお灸をすえられ、学校でもずっしりと反省をうながされたユウキ。その話は、私の耳にも入りました。

 ところがユウキ本人はと言うと、「別にモノを盗んだわけでも、誰かを傷つけたわけでもない。そこまで悪いことをしたかな?」という様子です。

 大人の立場から見たらどうでしょう?これだけ時間やエネルギーを使って子どもを指導しているのに、そのメッセージが子どもにきちんと届いていないことに愕然とするかもしれません。

 次の会話では、どのように出来事マップを作り、どのようにユウキが社会のルールを心から理解するに至ったかに着目してください。