古来、日本人は自然の中に仏性を見出した

たとえば、大分県の臼杵(うすき)をはじめ、全国に残る磨崖仏や石仏は、岩壁や石に仏性を見出して彫り出したものです。

あるいは、江戸時代前期の修験僧・円空(えんくう)は、自らの修行と教化のために、独特の粗削りの木像仏「円空仏」を生涯に12万体彫ったと言われています。

円空もまた、木に仏性を見出した1人でしょう。

さらに、「すべては仏様からいただいたもの。仏の心が宿っているから、大事に使うように」という教えもあります。

室町時代の浄土真宗の僧侶・蓮如(れんにょ)は、ある日、廊下に落ちている紙を見つけました。

すると、「仏様からの預かりものを粗末にするとは……」と拾い上げて頭の上にささげ持ち、大切に懐にしまったそうです。

これも、「ただの紙切れ1枚であっても仏の魂がこもっている」との思いからです。