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耐久財メーカーにとって売るのと貸すのは
どちらが得か?
「1円端末携帯」がなくなったワケ
京都大学大学院経営管理研究部教授 成生達彦

内田和成 [早稲田大学大学院商学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],平野光俊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],髙木晴夫
【第26回】 2011年8月15日
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 数年前までは、「1円携帯端末」をよく見かけたが、最近はほとんど見ない。携帯電話の端末をただ同然でユーザーに渡し、毎月の通話料で端末の代金を回収するのであるから、ある意味で、キャリアがユーザーに端末をレンタルしているのと同じである(実際には、代理店に販売奨励金を渡して1円携帯を実現していたが、それも含めて通話料で回収していたと考えられる)。一部のガスコンロや給湯設備、さらにはコピー機などもまた、消費者に販売されるのではなく、レンタルされている。なぜ、一部の耐久消費財はレンタルされるのか? 今回は、その理由を検討する。

2期間使用できる財の
1期目、2期目の最適価格は?

 単純化のために、(最長)2期間使用できる耐久消費財を供給する独占企業を想定する。また、この財の生産費用をゼロとする。さらに、100人の消費者がおり、この財をもっとも高く評価する消費者は、この財を使用することから、1期間あたり99円(2期間では198円)に相当する効用を得るものとする。2番目に高く評価する消費者は、1期間あたり98円、以下順に、100番目に高く評価する(もっとも評価しない)消費者は、1期間あたり0円に相当する効用を得るとする。

 彼らは、余剰(=効用-価格)が非負であれば、この財を1単位使用する。したがって、価格が90円であれば、(90円以上の効用を得る)10人の消費者がこの財を使用するし、50円であれば50人の消費者がこの財を使用することになる。

 いま、第1期において、独占企業がこの財を価格100円で販売したとしよう。このとき、1期間あたり50円(2期間で100円)に相当する効用を得る消費者の余剰はゼロであるから、(それ以上の効用を得る)50人の消費者がこの財を購入する。このときの企業の利潤は5000(=100×50)円である。

 1期間あたり49円(2期間で98円)以下の効用しか得られない消費者は、第1期にはこの財を購入しない。ただし、第2期になって独占企業は、彼らにたいして(費用ゼロで生産し)財を安い価格で販売することができるし、そうすることによって追加的な利益を得ることができる。

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内田和成(うちだ かずなり) [早稲田大学大学院商学研究科教授]

東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月まで日本代表。09年12月までシニア・アドバイザーを務める。BCG時代はハイテク・情報通信業界、自動車業界幅広い業界で、全社戦略、マーケティング戦略など多岐にわたる分野のコンサルティングを行う。06年4月、早稲田大学院商学研究科教授(現職)。07年4月より早稲田大学ビジネススクール教授。『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川書店)、『仮説思考』(東洋経済新報社)など著書多数。ブログ:「内田和成のビジネスマインド

 

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

平野光俊(ひらの みつとし) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1980年早稲田大学商学部卒業、94年神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了、98年同大学院博士課程修了、博士(経営学)、2002年から同大学院助教授、2006年から現職。経営行動科学学会会長、日本労務学会常任理事、日本労働研究雑誌編集委員。主著に『日本型人事管理』中央経済社。


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好評だった経営学教室の新シリーズ。新たな筆者お二人を迎えて、スタートする。国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入している。日本企業に漂う閉塞感を突破するには、何がキーとなるのか。著名ビジネススクールの気鋭の教授陣が、リレー形式で問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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