バブル崩壊、リーマンショックが生み出した
多くの「引きこもる大人」たち

 ここ最近、社会に適応できない「新たな引きこもり層」が大量に生まれている。

 新たな引きこもり層とは、従来の「不登校の延長」的なイメージで語られてきた引きこもりの人たちとは別に、一旦、就職した会社を休職し、そのまま離脱したり、就職活動で上手くいかなかったりしたことをきっかけに、社会とのつながりを持てなくなってしまった人たちのことだ。

 ここ1~2年の様々な官民の調査をみても、引きこもり全体に占める社会人経験者は、半数を超えた。

 筆者がインタビューしていても、引きこもるようになったきっかけを聞いていると、ある特徴的な傾向が浮かんでくる。

 例えば、彼らが社会を離脱していった時期で多いのは、山一證券や北海道拓殖銀行などが破たんした97年以降の金融不況の頃だ。

 そして、次に波が来るのは、2008年のリーマンショック以降のこと。リストラなどに遭って、働きたくても雇用の場がなくなり、引きこもっていく中高年者たちがどっと増えたような印象がある。

一方、1971年生まれ以降のいわゆる“就職氷河期”世代が、バブルの崩壊のあおりで、大学卒業後の就職活動が思うように行かず、仕事を転々としたあげく、いまは引きこもり状態になっているというケースもよく聞く。

 とくに、30歳代前半から40歳代前半にかけての世代は、元々こうした心性を持っている人が目につく。彼らは、いまや日本の引きこもりの中核を成す層でもある。

 こうした引きこもりの人たちは、最近増えたのかというと、そうは思わない。元々、引きこもりの心性を持つ人たちは、昔からいた。

 ところが、皆で理想を夢見ていられた高度経済成長期を経て、バブル崩壊以降の日本の構造の変化を機に、社会が彼らのような存在を支えきれなくなっているのではないか。つまり、社会に潜在化していた人たちの存在を顕在化させる日本の構造の変化が、引きこもり者を大量に生み出す背景にあると思えるのである。

 一体なぜ、引きこもりの心性を持った人たちの存在が浮き彫りにされるようになったのか。この間、日本が歩んできた社会の変化を振り返ってみた。