部下に「あなたが無理でした」って言われたらどうする?退職理由“本音1位”の破壊力写真はイメージです Photo:PIXTA 

人事、採用、マネジメントをはじめ、人間関係の困りごとを解決する連載第11回は、「退職理由の本音と建前」に迫る。それを踏まえて、部下の退職を未然に防ぐにはどんな方策があるのだろうか。退職とまではいかなくても、職場の人間関係を活性化するためのヒントにもなり得る。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)

退職理由
本音と建前の差

 皆さんの職場では、退職者はどんな理由で退職していますか。「結婚するので」「家庭の事情で」と言われて、「そうですか、残念ですが仕方ないですね」と納得してしまっていませんか。実は、退職理由には大きな「本音と建前」のギャップがあります。

 まず、データを見てみましょう。2016年に転職者本人に行った調査では、建前の退職理由の1位は「結婚、家庭の事情」でした。しかし本音の1位は「職場の人間関係」だったのです。

 また、2019年に転職コンサルタントに聞いた調査では、転職希望者が語る建前の1位は「仕事の領域を広げたい」でした。一方で本音の1位は「報酬を上げたい」、2位が「上司と合わない」「職場の人間関係が合わない」という結果でした。

※なお、2024年のエン・ジャパンの本人調査では、建前の1位は「別の職種にチャレンジしたい」、同率2位が「人間関係が悪いと家庭の事情」、本音はダントツ1位が「人間関係が悪い」、2位が「給与が低い」、3位が「会社の将来性に不安を感じた」となっている。

 私が人事コンサルタントとして様々なクライアントと接してきた経験からも、人間関係の問題が退職理由の上位に来ることは間違いありません。具体的に言うと、「上司と合わない」「同僚とウマが合わない」「経営者の思想と合わない」「組織文化に合わない」といった理由です。

 組織文化とは結局のところ、そこにいる人たちに規定されるものですから、これも広い意味での人間関係の問題と言えるでしょう。

 辞めて行く人の表面的な理由を額面どおり受け止めていては、実は、組織に潜む大きな問題に気づくのが遅れたり、離職を食い止められなくなったりします。退職の本音と建前を考察しながら、離職を防ぐ手立てをお話してみたいと思います。