知名度は低いが7月28日は「世界肝炎デー」である。

 肝炎と聞くと脂肪肝やアルコール性肝障害が思い浮かぶが、この日は特に、ウイルス性肝炎に焦点を当て啓発が行われる。

 日本では、非転移性(原発性)肝臓がんの1、2割はB型肝炎が、6割はC型肝炎が原因とされている。10人の原発性肝臓がん患者のうち、8人までもがウイルス感染で発症しているのだ。肝炎ウイルスならぬ「肝がんウイルス」と呼んだほうが、より実態に近いかもしれない。

 肝臓がんは予後が思わしくないがんの代表で、1期の5年生存率は58.9%、リンパ節転移がある3期になると、15.2%と2割にも満たない。しかも肝臓は生命維持に不可欠で、すべてを摘出することができないため、5年以内の再発率は、7~8割にも上る。

 がん医療の基本は早期発見・早期治療だが、こと原発性肝臓がんに関しては、発症原因のウイルス性肝炎を治療し、がんを「発症させない」ことが肝心なのだ。

 一般社団法人日本肝臓学会発行の「肝がん白書」によると、肝炎ウイルスによる慢性肝炎患者は、B型肝炎ウイルス(HBV)が110万~140万人、C型肝炎ウイルス(HCV)が190万~230万人に上る。しかも、未診断の潜在患者がそれぞれ100万人近くいると推測されている。

 HBVとHCV検査の公的補助制度は、2001年にスタートしたばかり。検査の存在自体があまり知られていないかもしれない。20歳以上は、初回のみ無料で検査を受けられる。簡単な血液検査なので、一度は受けてみよう。

 感染が判明した後は治療である。近年、ウイルス性肝炎の治療薬は飛躍的に進化した。特に、HCVについては直接作動型抗ウイルス薬が登場。数カ月~半年、薬を飲むだけでウイルスの完全排除が可能になった。HBVも飲み薬が使えるが、こちらは長期間飲み続ける必要がある。

 HBV、HCVともに医療費助成を利用すれば自己負担額は、毎月1万~2万円ですむ。家族への感染や肝臓がんのリスクにおびえる負担を考えれば安いものだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)