8月10日のFRB(米連邦準備理事会)は、金融緩和を継続する旨のコメントを発表した。これよって、世界の金融市場はやや落ち着きを取り戻したように見えるが、依然として、ユーロのソブリン危機、アメリカの景気後退懸念は払拭されておらず、市場は不安定な状態が続いている。2008年のリーマンショック後、先進各国は大規模な財政出動、金融緩和をしたにもかかわらず、再び景気後退に対する不安心理は高まっている。世界経済の根底では何が起こっているのか。『危機の経済政策』(日本評論社)で、経済危機と経済理論、経済政策の関連を見事に解き明かしている早稲田大学政治経済学術院の若田部昌澄教授に、現在の混乱をどう読み解き、どのような政策を打つべきかを聞いた。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)
大きく三つに分かれる
世界経済の見立て
若田部 最初にマクロ経済学者が、今の状況をどのように見ているかについて、整理しておきましょう。
1番目が「不十分派」。これはケインズにシンパシーを寄せているような人々で、代表が米プリンストン大学のポール・クルーグマンや、ハーバード大学のグレゴリー・マンキューといった人たちです。100年に1度という金融危機が起きた。それに対して大規模な財政出動と金融緩和を行ったが、今回の危機は大変大きかった。だから、すぐに解決するほうがおかしいので、今までやってきた対策の延長線上、あるいはさらに効果のあるやり方でもっとやらないといけない。対策が息切れしているという見方です。