債務上限問題が
予想外の早期合意
米国では、国内外の不安材料となり続けてきた「債務上限問題」がようやく解決した。債務上限問題の背景には、米政府が国債発行などを通じて借金できる債務残高の上限が、法律で定められていることがある。
政府の債務残高は、新型コロナ経済対策費などにより膨張したことで、2023年初めに法定上限に達し、財務省が特別措置で資金を捻出する状況が続いてきた。財務省の資金が尽きた場合、国債の元利払いが滞る、ないしは、政府支出を削る必要が生じ、国内外で大きな混乱が生じることが見込まれていた。
このため、早急に債務上限引き上げのための法律を通す必要があった。しかしながら、与野党の隔たりは大きく、現在のねじれ議会の下では、解決のめどが立たない状況が続いてきた。野党・共和党は、財政保守派の存在感が高まっており、協議を進める条件として大規模な歳出削減を要求し、一方、バイデン政権・民主党は、無条件での債務上限引き上げが当然とのスタンスを崩していなかったためである。
与野党協議が進展する兆しがない状態は5月上旬まで続き、米財務省の資金が枯渇するとされる6月上旬の「Xデー」までの問題解決が難しいとの見方が強まった。そうした中、5月中旬に日本で開催されたサミット出席を早めに切り上げたバイデン大統領が、共和党のマッカーシー下院議長側との協議を進め、Xデー直前である5月27日に土壇場で合意に至った。
予想を上回るスピードで協議が進んだ背景には、(1)今回同様に債務上限問題が深刻化した2011年には米国債の格下げに至ってしまったことの苦い記憶、(2)今年3月の銀行危機を受けた金融市場の混乱の経験などが、与野党の首脳部の恐怖心を高め、最終的に債務上限問題を解決することへの積極姿勢を高めたことが考えられる。
その後、懸念されていた議会審議も大きな混乱なく通過し、バイデン大統領が署名したことで、合意内容を盛り込んだ「財政責任法」が成立、今回の債務上限問題は解決した。