OPECプラスの協調減産などの買い材料、主要国の大幅利上げによる景気後退懸念などの売り材料。こうした強弱の材料の交錯が続き、原油は一進一退のレンジ相場を続けそうだ。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
産油国の自主減産や米インフレ
鈍化で4月中旬に高値
リスク資産の一角である原油の相場は、3月に米国発の金融システム不安からリスク回避の動きが強まる中、下げがきつくなった。
3月20日には米国産原油のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)で1バレル当たり64.12ドル、欧州北海産原油のブレントで70.12ドルと、2021年12月以来の安値を付けた。
その後、官民による対応で金融システム不安がいったん和らぐにつれて、原油相場も持ち直し、3月末時点ではWTIが75.67ドル、ブレントが79.77ドルとSVB(シリコンバレー・バンク)破綻後の相場下落分をかなり取り戻していた。しかし、その後、原油相場は落ち着くどころか、乱高下を続けた。
まず、産油国が動きを見せた。4月2日(日曜日)に、サウジアラビアなどOPEC(石油輸出国機構)と非OPEC産油国で構成する「OPECプラス」参加国の一部が5月から12月まで日量約116万バレルの自主減産を行うと発表した。
翌3日にはJMMC(合同閣僚監視委員会)の開催が予定され、現行の原油生産方針の維持が確認されるとの見方が大勢であった中でのサプライズであった。
3日(月曜日)の原油相場は急騰し、WTIは81ドル台、ブレントは86ドル台まで跳ね上がった。OPECプラスが昨年11月から実施した同200万バレルの協調減産やロシアが3月から行った同50万バレルの減産と合わせてOPECプラスで合計同約366万バレルの減産が継続すれば、今年後半には需給が引き締まるとの見方が優勢だった。
ただし、原油高自体がインフレ圧力となって各国の利上げにつながりやすいとの見方や、利上げはエネルギー需要の減退につながりやすいとの見方もあり、一方的な原油高にはならなかった。
それでも、12日には、CPI(米消費者物価指数)の伸び鈍化を受けてFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ局面が終了に近いとの観測が強まって景気後退への懸念が緩和したこともあって、WTIで83.53ドルと2022年11月中旬以来、ブレントで87.49ドルと1月下旬以来の高値まで上昇した。
しかし、その後、原油相場は、サプライズ減産発表で上昇した分以上に、下落してしまう。