近年、障害者が生産するイチゴや日本酒がブランド製品として話題になっている。「障害を持っていても、最高の生産者になれる」を目指す障害者と支援者を紹介しよう。(医療ジャーナリスト 福原麻希)
7月のよく晴れた日、特定非営利活動法人(以下、NPO法人)ジョブファーム(千葉県・大網白里市)を訪問したところ、利用者が秋からのイチゴ栽培に向けて、ビニールハウスで土壌消毒をしていた。毎年、同じ場所に、同じ野菜や果物を栽培すると、土壌の養分が過剰になったり不足したり、害虫が増えたりなどの連作障害が起こる。その予防には米ぬかを使うことが多いが、日本酒の酒粕も利用価値が高い。10~20代の男女4人がスタッフとともに、酒粕をちぎっては撒く作業をしていた。
ジョブファームでは、知的障害者や発達障害者に仕事の機会をつくるとともに、継続できるよう支援している(就労移行支援、および、就労継続支援B型事業)。特に、地域密着型の農業を取り入れ、イチゴや日本酒の原料となる酒米などを生産する。イチゴの「真紅の美鈴」、日本酒の「幸(さち)」ともに、地域ブランドとしてよく知られ、ふるさと納税品にも選ばれている。
監督者がいなくても
くり返し作業はきっちりこなす
「Aさん、もっと、そっと撒いてよ」
「Bさん、ちょっと左側にばかり、酒粕が多くない?バランスが大切だよ」
スタッフの声がけに利用者はアハハと笑いながら、手元の酒粕に注意を寄せた。4人とも、18歳で特別支援学校を卒業後、ジョブファームで就労訓練を続けている。