「孤立死」「無縁社会」といったキーワードが叫ばれる昨今。認知症や精神的、知的障害などによって判断能力が十分でない人のため、本人に代わって財産管理や介護施設の入居手続きなどをサポートする成年後見制度が注目を集めている。認知症高齢者の増加とともに、制度の利用者も増加しているが、それに伴いトラブルも多発している。その悪どい手法を紹介する。(フリーライター 光浦晋三)

悪徳後見人は1割にも上る!
弁護士でもまったく安心できず

被害者続出「成年後見制度」、弁護士や自治体にまで騙される!クライアントの財産を飲み代や生活費に流用し、解任される悪徳後見人が後を絶たない。悪徳弁護士や司法書士は、法律の知識が豊富なだけに、騙しの手口が高度なのも特徴だ

 成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な成人に代わり、家庭裁判所が選んだ弁護士らが財産管理や契約などを担い保護、支援する制度だ。

 たとえば親が認知症になれば、その子どもが財産管理を行うのが自然だろう。しかし近年、家裁は「親族では公私があいまいになる」として、後見人に“士業”の人を選任する傾向にある。後見の質の向上を目指す一般社団法人「後見の杜」の宮内康二代表はこう語る。

「親族による横領が多いとされますが、『後見の知識不足』や『同居による家計や生活費の混在』が少なからずあり、是正や改善は可能と認識しています。他方、後見に関する知識があることが前提で、自ら家庭裁判所に営業し、家裁から仕事をもらっている士業後見人による横領は悪意しかなく、看過されるべきではありません」

 他人である弁護士などが認知症の高齢者を食い物にするとは、まったく許せない話だ。

「守るはずの高齢者の財産を自らの生活費や飲み代に使い込む。それも1人当たりで数千万円規模になりますからね。後見人を監督する家裁を欺くために、虚偽の報告書を提出するというから、最初からだますつもりなのは明らかです。悪徳商法以上に狡猾な弁護士や司法書士後見人は許されません。しかも、このような横領で解任されたり、自ら辞任する悪徳後見人が統計上、1割程度いるというから驚きです」

 こうした悪徳弁護士や司法書士の触手は、公の立場で高齢者の生活相談を受ける「地域包括支援センター」や「社会福祉協議会」にまで伸びているという。

 東北地区のある70代女性は、子どもがいないため、入院時の保証人や認知症になってからの後見人に不安を抱き、市内の地域包括支援センターへ相談に行ったという。地域包括支援センターの職員から市内の女性弁護士を紹介され、その弁護士と2回しか会っていないのに財産管理や死後事務など4本の契約を結ばされた。契約手数料だけで45万円。しかもその後、何年間もその女性弁護士からの連絡は一切なかったという。

「不安に感じた女性が地域包括支援センターの職員に相談したところ、『弁護士さんはそんなもんですよ』とあっさり言われたそうです。そこで女性は後見制度の専門家に相談して4つの契約書の中身を確認してもらったところ、死んだら財産を弁護士に全部持っていかれる内容であることが発覚しました」