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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略

円高は輸入型企業や内需型企業にとっても逆風だった!?
ニトリ、ABCマートが円高で営業「減」益になる理由

高田直芳 [公認会計士]
【第65回】 2011年8月26日
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 東日本大震災のときに最高値を記録した円高が、半年近く経過したこの夏(2011年8月下旬)、さらに更新された。ニッパチ(2月と8月)の閑散相場になるかと思っていたら、そうでもなかった。

 こうした円高問題について、前回(第64回)コラムでは、トヨタ自動車などの自動車業界3社と、東芝などの電機業界8社のデータを用いて、「為替レート感応度分析」を紹介した。これは「1円の円高」によって、貿易立国を標榜するニッポン企業(特に輸出型企業)の営業利益がどれだけ「減少」するかを調べるものだ。

 前回コラムでは、その分析結果として〔図表 1〕を提示した。以下、証券コード順で略称名を使用する。

企業活動や経済活動は「複利構造」
円高の恐怖を必要以上に煽る「単利計算」の罠

 前回の復習を兼ねて、〔図表 1〕から浮かび上がる、いくつかの特徴を指摘しておこう。

 1つめは、メディアなどでは2011年になってもいまだに、「トヨタは、1円の円高で▲300億円の営業『減』益になる」としていることだ。最近では「▲340億円」や「▲350億円」まで飛び出している。ニッサンについては▲200億円、ホンダについては▲150億円とする見解が多い。これらの企業はヘッジ取引もせずに、むき身で「円高の嵐」に立ち向かっているとでもいうのだろうか。

 〔図表 1〕を見れば明らかなように、トヨタの場合、2年前の09年3月期であればそうした見解も正しかったであろう。ところが、09年後半以降は、急速に改善されている。ニッサンやホンダについては「なにをかいわんや」である。

 これだけ大きな「見解の相違」があるとなると、そもそもの話として、「為替レート感応度分析」の計算方法に彼我の差があるのかもしれない。それを簡単に確認しておく。まず、〔図表 1〕で描いた「タカダ式感応度分析」は、次の命題を基礎としている。

 〔図表 2〕は要するに、昨日稼いだキャッシュは今日へ再投資され、今日稼いだキャッシュは明日へ再投資されるという「複利」を基本とする。そのための計算構造として「自然対数の底e」を内蔵した指数関数を用いる。

 〔図表 2〕が示唆する「複利」以外の計算方法としては、「単利」がある。本連載でたびたび指摘しているCVP分析(損益分岐点分析&限界利益分析)や、限界利益概念は、1次関数を用いるので単利計算の典型だ。これは要するに、昨日稼いだキャッシュは今日へ再投資せず、今日稼いだキャッシュは明日へ再投資しない。日々稼いだキャッシュを翌日に再投資することなく、金庫に死蔵していくのが、単利の基本だ。

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高田直芳 [公認会計士]

1959年生まれ。栃木県在住。都市銀行勤務を経て92年に公認会計士2次試験合格。09年12月〜13年10月まで公認会計士試験委員(原価計算&管理会計論担当)。「高田直芳の実践会計講座」シリーズをはじめ、経営分析や管理会計に関する著書多数。ホームページ「会計雑学講座」では原価計算ソフトの無償公開を行なう。

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大不況により、減収減益や倒産に直面する企業が急増しています。この連載では、あらゆる業界の上場企業を例にとり、どこにもないファイナンス分析の手法を用いて、苦境を克服するための経営戦略を徹底解説します。

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