表を見てわかる通り、60歳以降の返済期間が長いほど、60歳時点でのローン残高は多くなる。毎月の返済額を10万円前後としている人が多いので、表の試算は月10万円返済としているが、その場合60歳時残高は、残りの返済期間が5年なら600万円弱、10年なら1100万円前後、15年なら1600万円弱となる。

 これまでFPとして20年以上、住宅ローンの相談を受けてきた経験から、60歳までに繰り上げ返済で何とか完済ができるのは600万円程度だと実感する。つまり、当初65歳までのローンを組んだ人は何とかなるということだ。

 60歳時点で1000万円以上の残高があると、老後はきびしいもの、つまり「老後貧乏」になる可能性が高い。退職金で繰り上げ返済してしまうと、老後資金が減ってしまうからだ。

年金収入でローン返済をすると
赤字は年170万~220万円にもなる!

 年金収入からローンの返済をする家計をイメージしてみよう。総務省の家計調査(2016年)によると「高齢無職夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)」の平均世帯年収は255万円。現在の高齢女性は制度上年金額が少ないので、これから老後を迎える人なら、もう少し多いだろう。夫は40年くらい会社員(公務員)、専業主婦が長かった妻という組み合わせなら、年金収入は2人で300万円前後見込める。

 300万円を12ヵ月で割ると月25万円。所得税や住民税もかかるし、国民健康保険料や介護保険料も払うことになるので、実際には使える金額はもっと少ない。交際費や余暇費など年に数回のイベント的支出もあるので、1ヵ月に使える年金額は20万円に満たないだろう。

 仮に月に18万円自由に使えるとすると、その中から10万円を住宅ローン返済に回すと、どういうことになるのか。残り8万円で食費・日用品、光熱費、通信費といった毎月の生活費をすべて捻出するのは無理で、家計は大きく赤字となり、足りない分は貯蓄を取り崩すことなる。

 ローン返済が終わっている家庭でも、年間50万~100万円くらいの赤字で赤字分は老後資金を取り崩している。ということは、年120万円のローン返済が残っていると、170万~220万円もの赤字! 老後資金がどんどん減るとともに、不安な気持ちも増大する。