増税ボーイ
8月29日の民主党代表選挙は、野田佳彦氏が決選投票を制して、新代表となり、翌30日、菅内閣の総辞職後、衆院の首班指名を受けて、内閣総理大臣に就任した。
粘りに粘った菅前首相であったが、最後は力尽きたかのような、静かな辞職となった。これ以上粘るとまずくなる事情が菅氏の側に新たに現れたのだろうか。ともあれ、今日の日本の窮状をもたらした菅内閣の政策を早く転換するためにも、また、次期衆院選まで早や残り2年となった与党・民主党に立ち直りの時間を与えるためにも、こんなことなら、もっと早く辞任してくれたら良さそうなものだった。
ちなみに、菅首相の最大の功績は何だったかと振り返ると、参院選前に消費税率引き上げを言い出して、結果として、消費税率の引き上げが困難な政治状況を作り出したことだったろう。
仮に参院選前に菅氏がおとなしくしていたら、民主党は多数を確保しただろう。そして、民主党が衆参で多数を抑えた状況で「社会保障と税の一体改革」の名の下に増税に向かっていたら、消費税率引き上げが決まっていたかも知れない。
それ自体が、デフレと不況の最中で不適切なタイミングの増税決定だし(直ちに増税を実施しなくても、「期待」のマイナス効果は表れかねない)、その後に、東日本大震災があったことを思うと、日本経済は、菅氏の暴発に結果的に救われたのかも知れない。財務省としては、財政再建を訴えるレクチャーが効き過ぎたのかも知れないが、大根役者を思い通りに動かす脚本を書くことの難しさが分かる。
さて、野田氏は、代表選の演説で、自ら「シティボーイには見えない」と仰っていたが、世間は彼のことを財務省が育てた「増税ボーイ」と見ている。
新内閣が出来ると、マーケットに及ぼす影響を考えることが半ば恒例となっているので、以下、主にマーケットの立場から、今後の野田首相体制について考えてみたい。一つは円高、もう一つは増税について検討する。
野田氏の代表選出前後の市場の動きは、概ね小動きであったが、前日比プラスだった29日の株価は、野田氏が1回目の投票で2位となり決選投票に臨む辺りから明らかに伸び悩みはじめ、野田氏が株式市場には好かれていないらしいことが覗えた。