印刷会社としては珍しく、自社ブランド商品を持つ大成美術印刷所。何枚めくってもカレンダーが見える主力商品「ななめもーる」は、そのユニークさが注目され、海外進出のきっかけとなった

父が断念した夢を実現
ベトナム南部で初の日系印刷会社

 成長著しいベトナムにあって、南部の中心であるホーチミン市から北に40キロほどのところにいま、日系企業が注目している工業団地がある。ビンズン省ミーフック工業団地である。

 南北に6キロ四方、山手線内の約半分に相当するという広大な敷地で、同省傘下の公営企業が開発しており、ベトナム政府も支援している。工業団地だけでなく、同時にビンズン新都市も建設されており、商業区、居住区が設けられ、将来的には20万人の都市をつくる計画だ。東急グループによる東急ビンズンガーデンシティも建設中で、最終的に約7500戸が供給される。

 このベトナムの新都市にいち早く2007年に進出したのが東京都中央区に本社を置く大成美術印刷所である。ベトナム南部においては印刷業として法人登録された初の日系企業となった。同社の新保大八社長(49歳)はこう語る。

「社会主義国なので、印刷業のライセンス取得は厳しくて、すでに進出していた日系の印刷会社も何社かありますが、別の業種で法人登録しているのです」

 1万平方メートルの敷地に建設された第1工場が2009年初頭から稼働し、主に現地の日系企業を対象にパッケージ印刷を行っている。その後、第2工場を増設し、2017年から稼働。現在、売り上げは2億6000万円だが、これによって売り上げが50%増、利益が100%増を見込む。これまでも年率10%以上で成長するほど好調だ。

「進出当初は苦労しましたが、いまはベトナム工場のおかげで国内事業を改革していくだけの余裕ができました。それに、父がやむなく断念した海外進出を実現できたこともうれしいですね」と新保社長は語る。

 大成美術印刷所は、1952(昭和27)年創業で、新保社長は4代目となる。先代社長である父がインドネシア進出を検討した時期があったが、採算を見込める事業計画が立てられずに断念した経緯がある。

「私はちょっと強引に勢いで進めてしまった面もあり、いま思うともう少し投資を抑えて慎重に進めるやり方もあったかなと思います。父は基本的に進出に賛成でしたが、不安に思っていた面もあるかもしれませんね」と、新保社長は苦笑いする。