野田佳彦新首相は、組閣を終えて初めての記者会見に臨み抱負を語った。挨拶内容や質疑を聴いてもさすがに“そつ”がなく、安定感を感じさせるものであった。
内閣のキャッチフレーズやニックネームについては、内閣の仕事ぶりを見て世論が決めるものと答えたが、いかにも野田首相らしいと思われた。
菅直人前首相の「奇兵隊内閣」のようなポーズはともかく、政治に取り組む基本姿勢を簡潔な言葉で表してもよかったのではないか。昭和35年の第一次池田勇人内閣は「寛容と忍耐」を掲げたが、かなりの反響を呼んだ。
一般の人たちから見れば、野田首相は未だ無名に近く、どんな政治をするのか見当もつかない存在だ。一般国民はもちろん、閣僚に対しても民主党に対しても簡潔な言葉で政治姿勢を明確にする責任もあろう。
「重要閣僚の重み不足」で
党執行部の政治的影響力が強まる可能性も
さて、与党、内閣の人事が整って、野田政権の陣容が定まった。
率直に言って「党強政弱」と言う印象が否めない。政府・内閣に比べて党の力が相対的にかなり強くなっていると感じられるのだ。
内閣の三本柱と言える重要閣僚は、言うまでもなく、官房長官、財務大臣、外務大臣だ。ここに重量級の人材を起用できなかったのはなぜか。おそらく、首相は、岡田克也前幹事長をはじめ有力者の起用を考えていたに違いない。それが不発に終わったとしても次善の策がなかったのだろうか。
私は、思い切って鹿野道彦氏を官房長官に据え、腹心の藤村修氏を副長官に配すればよかったと思っている。
官房長官は、首相の防波堤となる役割もある。重量級の官房長官を得ると、首相の政権運営は格段に円滑に進むことが期待できる。
3人の重要閣僚の重みの不足が、逆に輿石幹事長など執行部の政治的影響力を強めている。このことが今後の政局に与える影響は大きいだろう。