海の底にひっそりと沈む海底ケーブル。その内部では1秒間に50兆ビット、DVD1300枚分を超す膨大なデータが飛び交っている。
世界をつなぐ通信手段といえば通信衛星を思い浮かべるかもしれないが、海底ケーブルは日米間を約9000キロメートルでつなぐことができるのに対し、衛星を介すと往復約7.2万キロメートル。通信速度と容量で圧倒的に有利な海底ケーブルは今や国際通信の約99%を占める、通信インフラの根幹なのだ。
海底ケーブルの敷設は複数国の企業が集い、数百億円が動く巨大プロジェクト。その中核を担うことができる人材は一握りの存在で、全世界に約20人しかいないという。そんな“プロフェッショナル”の一人が佐藤吉雄だ。
「グローバルな仕事がしたい」と日本電信電話(NTT)に入社した佐藤は、国際インフラ構築のため1997年に発足したNTT初の海底ケーブルプロジェクトの初期メンバーの一人。「誰も分からないからおまえがやることが全てだ」と当時の上司に告げられ、以来、20年にわたって海底ケーブル一筋の道を歩み、世界でも一目置かれる存在にまでなった。