東芝の2017年3月期決算に対し、PwCあらた監査法人が「限定付き適正意見」を表明したことが、依然として波紋を広げている。
東芝は、8月10日の決算で「不適正意見」を辛うじて回避し、目先の東京証券取引所の上場を維持することができた。しかし、17年3月期に計上した米原子力発電事業の巨額損失を「16年3月期に計上すべきだった」と主張するPwCあらたと、「その必要はなかった」とする東芝との見解の対立は全く解消されていない。
さらにPwCあらたは、東芝の17年4~6月期決算に対しても「限定付き」として適正意見を出していない。比較対象となる前期決算を認めていないことが理由だが、このままでは、東芝が今後公表する7~9月期以降の四半期決算と18年3月期決算も適正意見が得られないことになる。
こうした状況に危機感を抱いているのは、日本の監査論の第一人者である青山学院大学の八田進二教授だ。「PwCあらたが適正意見を出さず、東芝がそれを否定し続ける無意味なやりとりが続けば、そもそも会計監査とは何なのかという監査無用論になりかねない。日本の監査制度はかつてないほど存立の危機にある」と言う。