野田佳彦首相が初の所信表明演説に臨んだ。
文字数にして約9500字、自民党政権時代の首相と同程度だが、鳩山、菅という民主党の歴代首相としては短い。
実は、分量はどうでもいい。問題は中身だ。所信表明といえば、自民党政権時代、それは各役所から予算要求に絡む陳情の場と化していた。
「短冊」とも呼ばれるような形で各役所からの要望を貼り付けながら首相秘書官らによって作られるのが首相演説と相場が決まっていた。
自民党時代、所信表明演説が
官僚からの陳情の場となったカラクリ
国会で発せられた首相の言葉は重い。それが所信表明となればなおさらだ。それゆえに、その演説の中に、役所の要望をちりばめることに成功したら、官僚たちにとっては半ば勝利したようなものなのだ。
たとえば、その後の予算折衝などでそれは大きな「武器」となるのだ。
「総理が所信表明でも仰ったとおり、本件は急務であり、ぜひとも相応のご配慮を――」
このような形で、シーリング、財務折衝、復活折衝など各場面で強力な「武器」として使えるというわけなのである。
果たして、野田首相の所信表明演説はどうだったのか。検証してみよう。(引用に当たっては、中日新聞ウェブ版などを参照)