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5月31日、米Minerva Schools at KGI(ミネルバ大学)のBen Nelson CEOと孫泰蔵氏がスポンサー提携を発表 Photo by Takeshi Kojima

 最近、「人材育成」という言葉自体がもはや古いのではないかと感じています。そう思ったのも、MOVIDA JAPAN(モビーダ・ジャパン)という会社で起業家を育成する支援プログラムを行ってみて気付いたことがあるからです。

 そこでは起業家の卵に対して、事業計画の作り方やチームの築き方などを教えてきました。カリキュラムを組み、企業経営を進める上でのこつを伝えてきたのです。

 また毎週、第一線で活躍する起業家を招いて、創業時の苦労や成功・失敗談をお話ししてもらいました。互いに秘密保持契約を交わし、普段は明かさないノウハウまで惜しげもなく語ってもらったのです。講義の後には懇親会を開き、ピザやビールを片手に歓談できる場を用意しました。

 このプログラムを何年かやった後、僕は参加者たちに「何が一番役に立ちましたか」と聞きました。すると、「ピザパーティーが良かった」という声が上がりました。正直、耳を疑いました。こちらは一生懸命カリキュラムを整えていたのに、「ピザの方が上なのか」とショックを受けたのです。

 ですが、その理由が分かりました。毎週ピザパーティーを開いていると、最初は見ず知らずの間柄だった参加者たちが自然と互いに悩みを打ち明けるようになりました。もともと似た境遇にいるわけですから、会社の財務で悩んでいたら「この会計の先生を紹介しよう」と、人手が足りなければ「うちの社員を貸すよ」などと、互いに助け合う関係に発展したのです。すると、見る見るうちに全員のレベルが上がっていきました。

 参加者たちはカリキュラムの中身よりも、互いを高め合うコミュニティーに価値を見いだしていた。つまり、「人材育成」よりも、「自ら学ぶ環境をデザインする」ことの方が大事だと分かったのです。

 世の中を見渡してみると、案外そういう環境が用意されていることに気付きます。