スマートフォンやタブレット端末をめぐり、世界中で火を噴くアップルのサムスン電子潰し。泥沼化した知的財産権での訴訟合戦は、ついに舞台を日本に移した。他社を圧倒するアップルの知財包囲網は、技術面からデザイン面にまで及ぶ。その裏には、サムスンの猛追に対するアップルの危機感がうかがわれる。
「海外では販売差し止め処分も出ている。日本で影響はあるのか」
9月8日、都内で開催されたNTTドコモの新しいタブレット端末を披露する発表会は、異様な雰囲気に包まれていた。ドコモ側のプレゼンテーションが終わり、メディアの質疑応答に移るやいなや1発目の質問で、華やかな舞台には似つかわしくない、泥臭い問題に話が及んだからだ。
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その原因は、新製品の製造元である韓国のサムスン電子が、日本で米アップルから特許を侵害したとして訴えられたことにある。
訴状によると、サムスン製の人気スマートフォンの「ギャラクシー」やタブレット端末の「ギャラクシータブ」が、音楽データなどの情報をパソコン本体とやりとりして同期させる方法について、アップルの特許を侵害しているというもの。少なくとも1億円の損害賠償金を求めている。
年末商戦に向けて、その日はサムスンにとっても華々しいデビューの場となるはずが、突如として暗転したのだ。
サムスンにとっては悪夢の再来だろう。というのも、サムスンはドイツでも同様のタブレットに対してアップルからデザインを模倣していると訴えられ、数日前に現地裁判所から販売差し止めの仮処分を下されていたからだ。
偶然のタイミングとはいえ、それは電機メーカーの威信をかけた世界最大級の家電見本市「IFA2011」(開催地・独ベルリン)の真っ最中に起きた。世界中から集まった23万人を超える業界人らの眼前で、新型タブレットを会場から撤去する羽目になったのだ。
結果的にサムスンは一度ならず二度までも、アップルとの知的財産をめぐる訴訟により、晴れ舞台で顔に泥を塗られたことになる。
双方の訴訟合戦は米国、欧州、豪州、アジアなどに戦火を拡大させており、まさに泥沼状態にある。