Photo by Yoshihisa Wada

「お、ねだん以上。」を掲げて快進撃を続けるニトリ。創業者である似鳥昭雄ニトリホールディングス代表取締役会長兼CEOは、自らの来し方を振り返り、「どんな人でも、ロマンとビジョンさえあれば、何かしらの成功を成せる」と言う。今月は、ニトリのロマンとビジョンの経営をお伝えする。

ロマンは夢、ビジョンは現状を否定するための評価尺度だ

 2015年4月に、日本経済新聞で「私の履歴書」を連載させてもらった。実家の闇米商売や、闇米を校長に届けて高校を補欠合格になったこと、一つも注文を取れなかったダメサラリーマンぶりや、商売でのさまざまな失敗など、とにかくハチャメチャ続きの話に大きな反響をいただいた。

 編集者とは、「『私の履歴書』には、高学歴で生真面目に仕事に取り組んで成功された方が登場しているが、私は真逆。だから少しおもしろおかしく書きますよ」と打ち合わせていたが、予想以上の反響だった。「こんな『私の履歴書』を読んだことがない」と面白がっていただいた一方で、「あまりにも品がない」と批判があったことも承知している。

 しかし、格好をつけたところでしようがない。全てが私であり、全てが今につながっていると思うからだ。

 連載の反響であらためて思ったのが、「事業にはロマンとビジョンが必要だ」ということだった。私は、これまでの経験や失敗などから学んだ「プロとはどのような人物か」という思いをまとめ、ニトリの社員たちに提示している。その冒頭にあるのが「プロを動かすのは、理論ではなく、思想であり、見果てぬロマンとビジョンである」という一節だ。

 格好をつけて言っているのではない。誰よりも私自身がロマンとビジョンの大切さを身をもって知り、自分自身を変えることができた。だからこその第一条なのだ。

 学校を出て働き始め、20代は必死で仕事を覚え、30代は力量を発揮し、40代は部下を従えて打って出る。50代は自身と会社の将来に向けて知恵を絞る。しかし、いつになっても「自分はなぜ、この仕事をしているのか」「自分の一生は何のためにあったのか」を、つかみきれないままでいる人も少なくない。

 胸に手を当て、「自分の生あるは、このためにこそだ」と確信できる人は幸いだ。その決意や覚悟があれば、すでにプロとしての道を歩み始めているはずだ。しかし、そうでないならば、今回の連載で少し、私の話に耳を傾けてほしいと思う。