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岸博幸のクリエイティブ国富論

国を挙げた“増税万歳状態”の異常
クルーグマン教授の緊縮財政批判に耳を傾けよ

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第156回】 2011年9月23日
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 今や日本はもちろん、デフォルトの危機が報じられるギリシャを筆頭に欧州や米国でも、財政赤字と累積債務の削減という財政規律が最優先された経済財政運営がまかり通っています。しかし、そうした財政規律最優先は本当に正しいのでしょうか。

クルーグマン教授の反論

 この点について、プリンストン大学のポール・クルーグマン教授は概要以下のような反論を展開しています。

 財政規律を重視する考えは、歳出削減などを通じた財政赤字の縮小によって、政府に対する信頼が回復して経済も再生すると主張します。

 しかし、教授は、欧米における過去1年半の緊縮財政によって、企業や消費者は政府に対する信頼を回復するどころか、景気の悪化や失業の増加によって不安を一層大きくしただけであると主張しています。かつ、緊縮財政は今の景気を更に悪化させることも考えると、政府に対する信頼の回復という長期的な観点よりも、収益悪化や失業増加などの短期的な痛みへの対応を急ぐべきと述べています。

 そして、教授は、短期的な景気悪化が長期的な展望にも悪影響を及ぼすと強調しています。

 例えば、米国の製造業の生産力は、これまで平時において毎年2~3%程度拡大してきました。しかし、現在の生産能力は2007年12月に比べて5%低下していると推計されています。それは即ち、景気が回復を始めても生産能力が通常よりも早く景気拡大のボトルネックとなることを意味します。同様の事態はサービス産業でも起きるでしょう。

 即ち、歳出削減も一因となって米国の景気拡大はスローダウンしていますが、それは現在のみならず将来にも禍根を残すのです。

 もちろん、教授は財政規律の観点からも緊縮財政は賢くない点にも言及しています。財政赤字を無理に削減すれば、将来の経済成長率も低下することになりますので、当然、将来の税収増も期待できないからです。

 従って、結論として教授は、将来よりも今の経済を何とかするための政策が必要と主張しており、具体的には財政拡大と積極的な金融緩和の組み合わせを実行すべきと述べています。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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