「宅配値上げ」に透けて見える各社の周到なシェア奪取作戦日本郵便まで宅配料金を値上げすることを発表。実は、宅配大手3社の料金表を読み解くと、苦境の裏で周到なシェア奪取作戦を練っていることがわかる

ついに「ゆうパック」まで
宅配クライシスで相次ぐ値上げ

 9月5日、日本郵便が「ゆうパック」の料金を来年の3月1日から平均12%値上げすることを発表した。これまでにヤマト運輸、佐川急便も値上げを発表しており、これで宅配便大手3社がすべて値上げを決めたことになる。国内の宅配便シェアはこの3社で93%を占めるため、この発表は宅配市場全体が値上げをすることになったのとほぼ同義であることを意味する。

 値上げの背景には、周知のように「物流クライシス」と呼ばれる業界の危機がある。インターネット通販やオークション、フリマなどの発達で宅配便の量が増加し過ぎて、すでに運び切れない量の荷物が宅配業者に持ち込まれているのだ。

 そのため国内の半分近いシェアを持つヤマト運輸では、総量コントロールを施策として打ち出した。今期の宅配便取扱個数を前年度と比べて3600万個減らすというのである(当初計画の約8000万個から削減幅を下方修正)。

 しかし、8月の段階でもまだ荷物は減らずに増加している。確かに今年3月時点で前年比6.0%増だったヤマト運輸の宅急便取扱い個数は、6月には4.6%、8月には2.6%となっており、削減へのコントロールは効き始めている。しかし結局のところ、8月までの上期累計では4.2%増加しているので、年間の取扱数量を大きく削減することは不可能な状況である。